今では絶対に使えないフレーズも 古いクルマのキャッチコピーを大特集
今では使えないキャッチコピー
webCG編集部のFくんから、「クルマのキャッチコピーに関するコラムを書いてもらえませんか?」と打診された。「簡単にキャッチコピーっていうけど、星の数ほどあるなかから選ぶのは大変だよ」と返したところ、「例えばコピーはカッコイイのに実際のクルマは……とか、沼田さんがオモシロイとかヘンだと思うヤツでいいです」とのこと。しかも私の得意な旧車関連、古いもの中心でいいという。理由は「古いほうがヘンなコピーがありそうだから」とのこと。まあ、確かにそうだよな。今日ではコンプライアンス上、絶対に無理なものとかもあるし。ということで、しばしキャッチコピーにまつわるヨタ話にお付き合いいただきたい。 【画像】珍妙なキャッチコピーを持つクルマをぜひ写真で(19枚) 今日ではコンプライアンス上……と前述したが、その意味において今ならセクハラ&女性蔑視で一発退場レッドカード、それどころか不買運動にまで発展しちゃいそうな恐れがあるのが、「お、パイザー」。1996年に登場したコンパクトハイトワゴン「ダイハツ・パイザー」のキャッチコピーである。 車名に「お、」を付けただけでなぜ? かといえば、その答えはイメージキャラクターに起用されたアグネス・ラムにある。1975年に日本にデビュー、初代クラリオンガールにも選ばれたハワイ生まれの彼女は、愛くるしい笑顔と小柄ながらグラマラスな肢体でしばしの間日本の青少年をとりこにした。それから20年、母親となった彼女は双子の男児を伴い久々に日本のテレビCMに出演したのだが、やはりカメラは豊かな胸に……その絵面にこのコピーがかぶせられたといえば、お分かりでしょう。 セクシャリティーや女性がらみのコピーでいうと、「ダットサン・ブルーバードU」(1971年~)の「愛されてますか。奥さん」とか「日産レパードJ.フェリー」(1992年~)の「美しい妻と一緒です。」あたりも、今ならどこからか突っ込まれそうで、怖くて使えないかもしれない。
女性が乗せられる側から乗る側へ
女性がらみのキャッチコピーは数多くあれども、「日産チェリーF-II」(1974年~)の「クミコ、君をのせるのだから」は、スペースの半分以上がイメージキャラクターだった女優、秋吉久美子の顔面アップだった広告のビジュアルともども強く印象に残っている。 このコピーの「クミコ」は、まっとうに考えれば彼女や恋人だろうが、数あるコピーのなかにはそうではない関係の女性をフィーチャーしたものがあった。「三菱ランサー セレステ」(1975年~)の「妹は20歳」。イメージキャラクターはハーフのタレント・女優だった純アリスで、ビキニ姿で広告に登場していた。その絵面を見て「20歳の妹の愛車がセレステ、あるいは兄が妹にセレステを貸してるのならいいけど、乗せてるのだとしたらちょっとヤバくね?」などと思ったものだった。うがちすぎかもしれないが、これも今なら思いつかない設定ではないだろうか。 乗せられるばかりだった女性タレントが演じるイメージキャラクターが、乗る側に進出したのが1980年代以降の軽自動車やコンパクトカーの広告。とくに軽では、一家に一台から一人一台になった地方の若い女性ユーザーが憧れる、あるいは共感を覚えるであろう若い女性タレントが積極的に起用された。 そのなかでキャッチコピーが記憶に残るのが6代目「三菱ミニカ」(1989年~)。当時浅野ゆう子との“W浅野”で人気絶頂だった女優の浅野温子がストレートの長い髪をかき上げ、ガンを飛ばしながら「ハンパだったら、乗らないよ」と言い放っていた。これには「カッコだけなら、遊ばない」「変なヤツほど、おもしろい」というバリエーションもあって、勝手に“浅野メンチ切り三部作”と呼んでいた。 もうひとつは1994年に登場した4代目「ダイハツ・ミラ」の「森口エンジン」。イメージキャラクターを務めていた、現在も活躍中の“元祖バラドル”こと森口博子が「わたくし森口のように元気でパワフルなエンジン」とCMで語っていたが、それを省略してキャッチコピーにしてしまったのである。このミラに積まれてデビューしたダイハツの「JB」型エンジン(659cc直4 DOHC 16バルブ)は今も愛好家の間では“森口エンジン”で通るというから、たいしたものである。