次世代スタンダードを標榜 マツダ「CX-3」に乗る
タイヤサイズで変わるハンドリング
エンジンは低速から力があり、レスポンスは自然でリニア、全開にした時に怒涛のトルクを求めるのは1.5リッターには酷というもの。全負荷での速さは特筆するほどのものではなく、必要にして十分。むしろ通常のドライブ時に使い易い程度に低速トルクが出ており、ちょっとした勾配を変速させずにアクセルのわずかな踏み足しで登ることが自然にできる。そのあたりのエンジンとミッションの連携はよくできている。高速巡航での速度管理もしやすい。一言で言うと刺激的な楽しみはないけれど普段使いに楽なパワートレーンだと言える。 乗り心地は普通。特別良くもないが悪くもない。魔法のじゅうたんばりに路面の凸凹を難なくこなすという感じではないけれど不快な感じはない。その辺はむしろデミオより快適かもしれない。 ハンドリングは16インチと18インチでだいぶ印象が変わる。ある程度旋回が長いコーナーでは16インチモデルは切り足しが必要になる。コーナー入口で決めた舵角そのままで、アクセルで微調整しながら曲がっていくことができない。 進入してすぐ脱出の様なコーナーでは問題ないのだが、ある程度旋回が入ってくるような回り込み方になると、追加の切り増しが必要になる。切ればちゃんと曲がるので問題ないと言えば無いのかもしれないが、切り足す操作を求められるとやはり感覚的にはクルマが軽快に曲がっているようには感じられず、ちょっとよっこらしょ感がある。 マツダのクルマは比較的ハンドル依存性が高い感じは以前からあり、スロットルのオンオフでラインをコントロールしようとしてもあまり反応しない。スロットルよりハンドルを切ってくれというニュアンスが強い。しかし不思議なことに18インチモデルはそういうことになっていない。決してキビキビしているタイプではないが、落ち着いて自然に曲がる感じは普段のアシとしてとても納得がいくものだった。
高速道路の直進安定性は高い
4WDは全体に少しマイルドになる。発進した瞬間からフリクション感があり重さも感じる。FFと比較すればやはりそこに歴然とした差があるのだが、では走っていて気になる程かと言えばそうではない。基本的には生活四駆なのだと思うが、ウェットの舗装路でブレーキをかけた時のスタビリティはFFより高く、またコーナーリング中の安定度も高い印象を受けた。FFの方がクリアな印象はあるが4WDの「でっかいおにぎり」の様なちょっと素朴な安心感がもたらす寛ぎ感も長く乗るにはいいのかもしれない。 ちなみにサスペンションのセッティングは16インチを基準にして出しており、マツダの人いわく「同じになる様にセッティングしてあるはずなんですが……」とのこと。しかし「で、どっちが出来が良いと思います?」と聞くと、作った人も18インチの方がよくできているという認識だった。 高速道路の直進安定性はかなり良い。「矢の様にまっすぐと微動だにせず」というものではないが、基本的な直進性が高い上に微舵角の修正がやりやすいので疲れにくい。わざと修正を遅らせて少々大きめにしても嫌なヨーの立ち上がりがないので、そういうことにうるさい人でも誰かにハンドルを任せやすいと思う。そのあたりが神経質なクルマだと「他人の運転で嫌な思いをするくらいなら自分で運転する」ということになるから、案外重要な性能だと思う。