次世代スタンダードを標榜 マツダ「CX-3」に乗る
燃焼圧力がピストントップを押し下げる。力はピストンピンを経由してコンロッドに伝わり、コンロッドのビッグエンドを変形させながらクランクに伝わる。この時の騒音の波形を調べると、3500Hz付近にピークを持つ周波数成分が他に比べて強くなっており、これがガラガラというディーゼルの騒音の元凶になっていること、それがピストンピン付近で発生していることをマツダは突き止めた。であれば3500Hzで共振するダイナミックダンパーをどこかに装着すればそのピークを吸収できる。都合よくピストンピンは中空なので、その中にダイナミックダンパーを収めれば良い。 この機構は仕組みも理屈も極めて簡単で、原因を特定して突きとめること、ダイナミックダンパーを実装する場所を見つけることにほぼ全ての意味があるコロンブスの卵的なソリューションだ。ちなみにどこかのサプライヤーの技術なのかと聞いてみたら、エンジニアの答えは「マツダ内製です」とのこと。
パワートレイン刷新で運転環境は良好
シートに座ってみると、ポジションは良好だ。右ハンドルの場合、どうしても前輪がアクセルペダルを左へ押し出す。それにつられてブレーキも左による。対処方法は大きくふたつある。一つ目はシートを後ろに下げてしまうことだ。そうすれば前輪の影響は受けない。ところがそうやってフロントシートが後退すれば、リアシートのスペースかラゲージが削られる。小型車の様にパッケージ効率が重要な車種ではフロントシートは下げたくないのだ。 そうなると、前輪を前に押し出すしかない。ところが前輪の位置は、パワートレーンで決まってしまう。パワートレーンは一度設計したら何十年も使わないと元が取れないので、そうしょっちゅう新規に設計されない。マツダの場合、このパワートレーンの刷新タイミングがたまたまやってきたので、デミオのパッケージを構築するに際して前輪位置を前に押し出すことが可能になったのである。そうした根本的な改良のおかげで、デミオの基本骨格を使ったCX-3も運転環境は良好だ。 フロントシートはクッションが柔らかく、低反発系の素材なので座ってから馴染むまでに時間がかかる。実際走りだして10分後位になって腰の後ろのサポートが少し不足した感じになった。減点要素だと思っていたら20分後には違和感が消えていた。今回は試乗時間が1時間に限られていたので、数時間単位で乗った時どうなるかは別の機会に確かめてみたい。シートのヘリはBセグメントとしては例外的にしっかりしておりサポートは良好だ。