重度障害者が暮らすシェアハウス 入居した脳性麻痺の息子を持つ母「還暦を過ぎて、身体的なケアが難しい」「(息子は)楽しそうにしていて、いろんな人と出会いが増えた」
東京・世田谷区にある3階建ての建物。中に入ってみると、大きな広間に障害のある人たちが暮らしている。株式会社「HABING」代表・介護福祉士の熊谷勇太氏は「重症心身障害者の医療的ケアの方でも住むことのできるシェアハウスだ」と述べる。 【映像】重度障害者のタカシさん(仮名)31歳がシェアハウスで暮らす様子 障害者が家族の元を離れて暮らすシェアハウス。家族はもちろん、親族や友人など、いつでも誰でも訪問できるので、時間を気にせず、さまざまな人と触れ合いながら暮らすことができる。家の中は入居者の暮らしやすさを考え、車椅子で入っても、中で方向転換する必要がなかったり、キッチンの食器棚は低い位置に設置されるなど、細かな気配りがされている。シェアハウスを運営しているのは、介護サービスを展開する企業で、いつでも必要な時に、ヘルパーを依頼することができる。重度や医療的ケアが必要な障害者にも対応されている。 障害者向けの施設にさまざまな課題がある中、障害のある人や家族にとって、シェアハウスは夢の住まいなのか。入居する当事者の家族と『ABEMA Prime』で考えた。
■シェアハウスを運営する株式会社「HABING」
シェアハウスを運営する株式会社「HABING」は、介護サービス業を展開している。社員ヘルパーによるシフト制の訪問、時間帯や障害の程度に合わせてヘルパーを募集し、ヘルパーと入居者をマッチングさせている。また、ヘルパーの平均年収は常勤が約378万円、非常勤が約263万円に対し、「HABING」は全社員3年目で年収440万円を超えているという。
熊谷氏は、シェアハウスを作ろうと思った経緯について「私自身が十数年間、ヘルパーとして、現場で働いていた。居宅介護と言って、一人ひとりのお客様の家に伺って、1日1、2時間サービスを提供する。利用者さんはサービスを受けるが、家族の方はその時間休憩になっていない。そう考えた時、24時間体制でケアできるシステムを作らなくてはならない。できればグループホームを望んだが、親亡き後を考えたら、既存のグループホームのシステムではなかなか法整備が追いついていない」と答えた。 さらに、「今、障害のある方のグループホームは4種類ある。日中支援型やシェアハウスに近いような形、いろいろある。それぞれに、例えば夜間しか見てはいけないとか、日中見られるけど軽度の障害だけ、など制限がある。シェアハウスになることで、その制限を全て取り払うことができる。難しい問題ではあるが、そこにチャレンジした」と続けた。 作る上でのハードルが高かったことは「資金集めだ。小さな企業が、世田谷のど真ん中に、ゼロから土地を見つけて、そこにデザインをして作るような形になるので、資金集めは苦労した」と明かす。 シェアハウスの利用料は家賃9万円からで、食費や光熱費は別。熊谷氏は「一人ひとりの利用者さんの権利に応じて生活することが可能。一人暮らしの人が集まっているイメージだ」。家族の持ち出しについては「ほとんどの方が障害者年金、東京都にお住まいの方は各種手当を受け取っている。その中で一生涯、全て賄うことが可能だ。なので、親亡き後の生活を考えた時にも、親御さんが介護できない状態になっても、ご自身の権利で一生住むことが可能になる」と話す。 シェアハウスの報酬については「障害福祉サービスは、利用者さん一人に対して、1時間いくらという形で国から報酬が出る。必要ではない時間数は出ないが、1カ月を単純に考えると、24時間×30日で720時間。そこに全てヘルパーを派遣する形になる。なので行政にもお話をして、必要な方に対して、必要な時間数をいただく。その中で、全て派遣を行っていく形になる」と説明した。