元東京国税局局員のライターが教える、フリーランスの税金対策と「フリーランス新法」の活用術
法人化することで社会保険料の負担を軽減
さらに、年金保険料も増える恐れがあります。 会社員や公務員に扶養されている配偶者(国民年金第3号被保険者)は、保険料の支払いが免除されていますが、フリーランスに扶養されている配偶者は免除されません。独立すると、夫婦2人分の年金保険料を納めなければいけません。 僕の場合はこれらの負担増が重なり、公務員からフリーランスになって社会保険料が年間50万円以上も増えてしまいました。 こうした事態を前に、具体的に対策を講じたのは独立してからでした。ただ、税金なら控除枠を目一杯使って納税額を圧縮することもできますが、国民健康保険は対策の取りようがない。 あまりにも負担が重いので、僕はフリーランスの仕事を法人化しました。自分への役員報酬を少なめにすれば、社会保険料を抑えることができます。
「フリーランス」ならではのメリット
――フリーランスになると支出が増えてしまうわけですが、それでも小林さんはフリーランスという働き方に魅力を感じているわけですね。 小林:はい。とても魅力的です。 独立してすぐに妻が入院し、フリーランスのリスクを真剣に考えるきっかけになったと前に述べました。でも、3か月もの長期間、家族に寄り添うなんて、公務員だったら到底ムリでした。フリーランスならではのメリットと言えます。 とはいえ、フリーランスがいくら自由だからといって、社会保険料や年金保険料の負担増など、歓迎したくない現実があることも知っておくべきでしょう。
フリーランス新法は、フリーを目指す人にとっては心強い法律です
――フリーランスになった人が陥りやすい問題などはあるんでしょうか? 小林:フリーランスになったばかりの人が失敗しがちなのが、税金を支払うタイミングです。 フリーランスは確定申告しなければいけませんが、基本的に報酬は所得税が源泉徴収されているので、それほど多く税金を納めなくてもいい場合が多い。逆に、還付金としてお金が戻ってくることもあります。 ところが、住民税は前年の所得によって納税額が決まりますし、源泉徴収がないので還付金が出ることは通常あり得ません。つまり、必ず後から支払うわけです。 また、同じフリーランスでも業種によっては事業税を納付しなければならないし、インボイス制度が導入されたので、課税事業者になった場合は消費税も支払う必要が出てきます。 こうした税金の納付が控えていることを忘れて、今あるお金を遣ってしまうと支払いに困ることになります。