元東京国税局局員のライターが教える、フリーランスの税金対策と「フリーランス新法」の活用術
立場の弱いフリーランスを守る「下請法」
――フリーランスは仕事を受注する立場にあるため、どうしても不利な状況に置かれがちです。そんなフリーランスを擁護するため、今年11月1日から「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が施行されました。 小林:フリーランスは、きちんと仕事をしたのに発注側の都合で報酬を払ってもらえなかったり、受注したときの条件が後から変わったりすると、大変困ってしまいます。 このように立場の弱いフリーランスを守ってくれるのが、下請法という法律です。 下請法は発注側に禁止行為を定めており、例えば、納品物を受け取ることを拒否したり、報酬の支払いが遅れることなどを禁じています。インボイス制度を理由に、双方の合意もなく報酬を10%減らすのも、明確な下請法違反になります。
「下請法」と「フリーランス新法」の違い
僕にも困った経験があります。ブックライティングの仕事でほぼ1冊を書き終えたのですが、制作サイドの都合で発売が見送られ、報酬は払えないというのです。このときは下請法の話を持ち出し、報酬の一部を支払ってもらうことができました。 ただ、下請法にも難点があります。この法律の規制を受けるのは、資本金1000万円超の事業者に限られ、資本規模の小さなクライアントから仕事を受注したフリーランスは保護されないのです。 こうした状況を受けて、2024年11月1日から「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」が施行されました。 法律の内容は下請法と重なる部分も多いのですが、もっとも大きなポイントは資本金1000万円以下の事業者も規制を受ける点です。 これによって、下請法の保護を受けられなかったケースでもフリーランス新法が助けてくれます。今後、フリーランスを目指す人にとって、心強い法律と言っていいでしょうね。
変わりつつある日本人の働き方
――近年、日本人の働き方も大きく変わってきています。2018年には政府が推進する「働き方改革」の一環として、それまでのモデル就業規則にあった副業禁止規定が原則削除され、「副業元年」とも言われました。新著はフリーランスを目指す人だけでなく、副業をこれから始める人にも役立ちそうです。 小林:完全に独立しないまでも、副業を志す人にも役立つ内容だと思います。 僕自身、フリーランスを目指し始めた公務員時代、ライティングスキルだけで食べていくのは難しいと感じていましたが、報酬が発生しない副業的なかたちでライターの経験を積めたのが非常によかった。 その後、セルフブランディングをするようになりましたが、ブランディングが効果を発揮するまでは時間がかかりますから。