元東京国税局局員のライターが教える、フリーランスの税金対策と「フリーランス新法」の活用術
家族の入院を機にフリーランスのリスクを痛感した
ところが、独立した年に妻が入院してしまったんです。当時、妻は三男を妊娠中で定期的に検診を受けていたのですが、血圧に異常値が見つかり、緊急に入院することになったんです。 当初、お医者さんの話では1週間の入院だったのですが、数値がなかなか戻らず、結局、入院期間は2か月に及びました。さらに、早産だったため、出産後に三男も1か月入院したので、3か月にわたって取材に出かけることができなくなってしまったんです……。 仕事が満足にできない上に、入院費もかかり、お金の不安を抱える状態が続きました。この経験から、フリーランスのリスクを痛感した僕は、仕事のやり方や案件の単価にこだわるようになりました。
「元国税ライター」と名乗るようになったきっかけとは?
――現在、「元国税ライター」の肩書きを名乗り始めたのも、仕事のやり方を見つめ直したこの頃ですね。 小林:ブランディングを考えて、「元国税ライター」や「マネーライター(元東京国税局職員)」などと名乗っています。独立してしばらくの間、この肩書きを使わなかったのは勘違いしていたからです。 というのは、せっかく独立したのだから税金以外のテーマの仕事をしたいという思いがあったから。フリーライターとしてどんな案件でも幅広くできたほうがいいのかな、と考えたんです。実際、幅広い案件を受けたのですが、報酬は総じてそれほど高くはなかった。 そんな折り、ライター仲間からのアドバイスもあり、「元国税専門官」ライターと名乗り、肩書きに「フリーライター」としか書いていなかった名刺に、「元東京国税局職員」と一文を加えました。 効果は絶大で、この肩書きだけで何度も仕事が受注できたんです。
フリーランスになったら税金対策が大事!
――新著には、フリーランスという働き方の魅力やメリットとともに、フリーランスになると避けては通れないデメリットも包み隠さず明かし、その対処法も書かれています。 小林:会社員や、僕のように公務員からフリーランスになると、まずお金の問題に直面することになります。 日本では、フリーランスは会社員に比べて、著しく不利なんです。 仕事をすると、さまざまな経費が発生しますよね。会社員なら、交通費から接待費にいたるまで会社が負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担しなければならないのです。経費は、確定申告によって税金を抑える効果があるものの、全額が戻ってくるわけではありません。 フリーランスになると税金の負担も大きくなります。 会社員には給与所得控除があるのに対して、フリーランスにはありません。前にも述べたように、会社員は経費を会社が負担してくれる上に給与所得控除があるので、かなり優遇されていると言っていいでしょう。 社会保険料の納付額も増えます。 会社員は「会社の健康保険と厚生年金」に加入しますが、フリーランスになると「国民健康保険と国民年金」に切り替わります。会社員のときは、社会保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、フリーランスになると全額自己負担しなければなりません。 また、会社員の健康保険は扶養家族の人数がいくら多くても、負担する額は変わりませんが、フリーランスが加入する国民健康保険は世帯人数によって納付額が増えます。 家族全員分の国民健康保険料が算定され、世帯主が納める形になっているからです。僕は5人家族なので、その分、高額になってしまいました。