「僕は人に助けを求めるのが下手な人間」生きづらさと向き合う絵本作家・ヨシタケシンスケが作った “かくれが”とは? #今つらいあなたへ
8月下旬から順次全国の学校で夏休みが終わり、二学期が始まる。学校が再開することに負担を感じ、不登校になる生徒や自殺を選択する生徒が増えることが大きな社会課題となっている。絵本『りんごかもしれない』など数多くの絵本を手がけてきた絵本作家のヨシタケシンスケさんは、2024年3月に公開された、生きづらさを抱えた人たちが安全に集えるWebサイト「かくれてしまえばいいのです(通称・かくれが)」の制作に参加。不登校生の声にも耳を傾けることも多いヨシタケさんに、「かくれが」立ち上げの経緯や、自身が感じる生きづらさについて聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
この世がつらくなったらあの世でなく“その世”に隠れる場所
――生きづらさを感じる若者に向けたWebサイト「かくれが」は、どのような発想から生まれたのでしょうか。 ヨシタケシンスケ: 最初は、相談窓口の順番を待つ人の待合室として、生きづらさを抱えた人たちがアバターになって集えるWeb空間を作りたい、というオファーでした。でも、僕自身が人に助けを求めるのが下手な人間なので、「相談をしてもいいんだろうか」と思ってしまう気持ちがあるんじゃないかと思ったんですよね。そんな人たちも気軽に訪れることができて、勝手に入って勝手に出ていくことができる場所がいいんじゃないかと考えました。 この世にいることが難しいと思ってしまった人たちは、「じゃあ、あの世に行けばいいんだ」と死を選んでしまうことがあります。でも、あの世に行っちゃうと戻ってこられないですよね。この世とあの世の他に、“その世”みたいなもう一つの世界があったら、そこに避難して隠れればいい。ほとぼりが冷めたらまた戻ってくることにして、なんとか「この世から消えてしまいたい」という気持ちをしのげないだろうか、と考えました。それで「かくれが」と呼んでいます。 ――実際に「かくれが」をのぞいてみると、他のアバターと交流はできませんが、自分以外にもたくさんのアバターが動いている様子が見られます。 ヨシタケシンスケ: 自殺対策の専門家に監修してもらっていて、訪れた方同士がコミュニケーションを取れない仕組みになっているんです。例えば、訪問者同士が「僕も死にたい」「私も死にたい」「じゃあ何月何日にどこで待ち合わせしましょう」とやりとりできる場になってしまったら本末転倒です。コミュニケーションはできないんだけれども、入ってきた人それぞれが、自分の他にも同じタイミングでしんどくなってる人たちがいることがわかる。「こういう人たちがいるんだな」「一人じゃないんだな」と、お互いに思いを馳せることができるのは、自分にとっても嬉しい発見でしたね。 いろんな理由で隠れざるを得ない人たちの居場所はたくさんあるに越したことはないですから、「かくれが」がその選択肢の一つになってくれれば、作った意味はあるのかなと思っています。ただ、ここにたくさん人が来ることは決して好ましいことではないんですよね。ここに隠れたくなる人をいかに減らしていくかが、最終的にみんなが目指すべきことだと思います。