「僕は人に助けを求めるのが下手な人間」生きづらさと向き合う絵本作家・ヨシタケシンスケが作った “かくれが”とは? #今つらいあなたへ
「いくら言われても相談しない人はしない」僕も相談しない側の人間
――ヨシタケさんご自身も言葉にならないつらさを抱えてしまうことがあると伺いました。 ヨシタケシンスケ: はい、これは本当に自分でも不思議だなと思う部分ですね。人間関係、職場のこと、学校のことなどの特定の原因があるなら、そこから離れればつらさは緩和されるんですけど、もともと不安が強かったり、環境の変化についていけなかったり、気圧が下がることでものすごく気が落ち込んでしまったり……なかなかどうしようもない部分があるんです。 例えば、不登校の方に話を聞いても、思いの外原因がよくわかんなくて、でも学校に行けなくなるみたいな方って多いんですよね。生きづらくなっちゃうのも、原因がはっきりしないので、どうしようもないんです。人に相談しても、周りもどうしたらいいかわかんないし、本人だってどうしたらいいかわかんないんですよね。 ――つらい思いを持っているときに、ちゃんと人に助けを求めることができる「受援力」の大切さもよく聞くことがあります。誰かに助けを求めることについてはどう思いますか。 ヨシタケシンスケ: その言葉や概念の発明によって助かる人もいる一方で、余計モヤモヤする人の気持ちもわかる気がします。「本当につらくなったら相談に来てね」「窓口があるよ」といくら言われても、相談しない人ってしないんですよね。 僕も相談しない側の人間です。人に助けを求めることってすごいパワーを使うので、「否定されたらもうどうしようもないな」と思うと、なおさら塞ぎ込むことになってしまう。相談で解決することって、たくさんあるはずなんですけどね。だから、「相談をする」というボタン以外にも「自分の悩みが相談していいレベルかどうか迷ってますボタン」が、実はもう1個手前に必要なんですよね。「自分の悩みっていうのはどれぐらい深刻なの?」「人に相談していいの?」「迷惑がられないの?」って思っちゃうんで。 ただ、当たり前のことですけど「あなたがどこまでつらいのかはわからないけれども、そのつらさを改善する方法を一緒に見つけようとする人がいるのは間違いない」ということは覚えておきたいですよね。視野が狭くなっているとそう思うのがどうしても難しいのですが、どうにか毎回そこに立ち戻れるようにしたい。「かくれが」がそういう場所になってくれたら、僕自身のためにもなるなと思いますね。