デジタル化で2024年問題を乗り越える! 1年で総労働時間約20%減を実現した、新雪運輸の働きやすさ改革
従業員の反発を乗り越えて、1年で総労働時間約20%減を実現
――デジタル化したいけれど、ツールの導入や活用がうまくいっていない企業は少なくありません。貴社がデジタルツールをスムーズに導入・活用できた理由は何でしょうか。 代表のリーダーシップが大きいと思います。良いと感じたデジタルツールは、積極的に使ってみる方針です。日報が自動出力されるシステムは、どう入力したらいいのかわからず苦労したドライバーもいたようですが、慣れるとその便利さを実感してもらえたと思います。 ――労働時間削減のカギとなったセーフティーレコーダーを導入する際は、従業員の反発もあったと聞きました。 当社は、従業員に長く働き続けてほしいと願っており、従業員を守るためにドライブレコーダーを導入しました。この業界では、ドライバーが交通事故を起こして逮捕・勾留されることが少なくありません。運転手に過失のない事故でも、事故当時の状況を示す手段が不足していれば、その可能性は高くなってしまいます。 当社の瀧澤裕司代表取締役が「何とかならないか」と考え、2008年に証拠となる映像を残せるドライブレコーダー機能とデジタルタコグラフ機能を備えたセーフティーレコーダーを全車に導入しました。バスやタクシーが設置し始めた頃で、運送業界ではかなり早かったと思います。車内の様子も記録できるので、周りの運送会社からは「従業員が辞めてしまうのでは」などと懐疑的な声もありました。「運転中もずっと監視されているようだ」と、実際に退職したドライバーもいました。しかし、代表は何を言われても「これで従業員を守っていくんだ」と言い続けたのです。 ――その後、セーフティーレコーダーはどのようにして従業員に受け入れられたのですか。 実は導入から2年以内に当社のトラックをめがけた飛び込み自殺が2件発生しました。早朝と深夜の事故でしたから、目撃者はいません。これまでだと運転手は逮捕・拘留される事故ですが、ドライブレコーダーの映像を警察に見せると、「法定速度を順守しており、前方不注意も見られない」として、運転手に過失がないことが証明されました。2件とも民事を含めて無罪。ドライバーは免許証の点数を引かれることも逮捕・拘留されることもありませんでした。 この事故を経て、ドライバーが「ドライブレコーダーは自分たちを守ってくれるもの」と納得してくれるようになりました。 ――取り組みの結果、残業はどのくらい減りましたか。2018年や2019年の実績、最新の実績をお聞かせください。 営業所の1ヵ月当たりの総労働時間は、2018年の期初と期末を比較すると19.2%も下がりました。多少の波はありますが、以後も10%、14%などと二桁台の削減率をキープできています。特定の顧客との仕事に限定すると、39%もの削減率が実現された例もあるほどです。 また、ドライバー一人当たりの月間総労働時間が、国が設定している基準を越える従業員の数も減少しています。月間総労働時間が293時間を超えた従業員は、2018年には187人でしたが、2019年は計8人で約95%減少しました。2018年当時は月320時間までは問題なかったのですが、2018年の第1クオーターでは超えた人が21人いました。こちらは同年第3クオーター以降、0人を達成しています。この基準値は、年々下がっており、2023年に月293時間、2024年には275時間が上限となりました。早い段階から働き方改革を徹底してきたことが功を奏し、今は基準を越えるドライバーはいません。