デジタル化で2024年問題を乗り越える! 1年で総労働時間約20%減を実現した、新雪運輸の働きやすさ改革
長時間労働の実態をデジタルで見える化。顧客の理解を得て業務フローを改善
――ドライバーの長時間労働をどのように改善したのでしょうか。 当社が2008年に導入したセーフティーレコーダーには、車両の速度や走行時間、走行距離などが自動的に記録できるデジタルタコグラフ機能がありました。長時間労働の見直しに向けて、まずこの結果を分析しました。 また、業務を見える化し、工程を見直しました。運輸業に精通したコンサルタントの協力を得て、ドライバーが荷卸しや積み込み、荷物の積み下ろしが終わるまでドライバーが待機する「荷待ち」などの各工程にどのくらいの時間を割いているのか、短縮できる余地はないかなどを分析しました。すると、特定の顧客や、特定のルートで運んでいるときに長時間労働になっていることが分かったのです。中でも、荷待ちの工程が長かったのですが、この荷待ちを短縮するには、顧客の協力が不可欠でした。 ――お客さまに業務改善をお願いするのはハードルが高いですね。どのように協力を仰いだのでしょうか。 ドライバーの勤務実態を数字で示せたことは、大きかったですね。説得力が違います。データでの管理にアレルギーを持っている従業員ばかりでしたが、数字の力を実感しました。 まずは、あるお客さまに絞って協力を持ち掛けました。詳細なデータをお客さまにも見ていただき、「少しでも荷待ち時間を短縮してもらえないか」「帰りに高速道路の利用を認めてほしい」などとお願いしました。徐々に業務の効率化が進み、1日あたり約2時間の労働時間削減につながりました。その後、ほかのお客さまに同様の取り組みを広げ、全社で労働時間が短縮されていきました。 また、2022年にデジタルタコグラフをバージョンアップした際に、ドライバーが作成する日報が自動出力されるようになりました。日報を手書きすると30分前後は掛かっていたので、時間削減の効果は大きかったですね。そのほか、1週間単位で各ドライバーの拘束時間を集計し、週の制限時間を越えている場合はドライバーに共有しました。 ――残業を希望するドライバーもいたと聞きました。働き方改革について、どのように理解を得てきたのでしょうか。また、賃金体系はどう工夫されたのでしょうか。 ドライバーが自分の売り上げを伸ばしたいために無理な仕事量を詰め込んだり、「何とかこの時間内で収めたい」と余裕のない配車コースを組んだりするケースは多くありました。そのため事あるごとに、ドライバー自身の安全や健康を守るため、または法改正に対応するため、総労働時間の削減に向けた取り組みが必要であると伝えています。 また、稼ぎたいという気持ちから休日をほとんど取らないドライバーには、何らかの手を打たないといけないと考え、これまでは週休1日がほとんどだったのですが、「週休2日制」か「4週6日制」のどちらかを選べるように変更しました。4週6日制は、週休2日制よりも労働時間が長く、その分給与が高くなります。休養を確保しつつ、稼ぎたいという人の気持ちに少しでも応えるための「選択制」です。これは、若いドライバーからの問い合わせがきっかけで実現しました。 ――ドライバーやその他の職種の働き方はどのように改善したのでしょうか。 2018年にデジタルタコグラフのバージョンアップをした際に、運行の開始時間や終了時間、休憩時間、待機時間に加えて、アルコールチェックの計測時間も自動的に取り込めるようになりました。その他、事務員や庫内作業員も同様にツールを導入し、勤務時間を管理しやすくなりました。そのほかにも、夜間に出勤するドライバーの勤怠確認をするため、遠隔でも管理できる「IT点呼」を活用しています。各営業所に設置したアルコールチェッカーの映像と音声をリアルタイムで、運行管理者のいる拠点にデータを送付します。遠隔の映像も取り込め、同時にコミュニケーションもとれるので、ドライバーの健康状態も確認できます。また、毎月、営業所長が本社に集まって行っていた全体会議は、コロナ禍前からリモート会議に移行しました。