新型ホンダ・フリードの進化は乗れば納得だった! ちょうどいいサイズ感を守り抜いた最新ミニバンに迫る!
e:HEV搭載による変化
続いて、新型フリード・エアのハイブリッドである。乗り込んでの第一印象は視界がスッキリしている点だ。ダッシュボードが水平基調になり、中央奥に細長く配置してあったメーター類が、ドライバーの眼前に移動。ダッシュボード中央にはインフォテインメント用のスクリーンが鎮座している。旧型では逆V字型に2本あったフロントのピラーが1本にまとめられていることも大きい。 機械面での目玉は、ハイブリッドのシステムが「e:HEV」に変更された点にある。発電用と駆動用、役割の異なるモーターを個別に備える2モーターのe:HEVは、街中ではエンジンは発電に専念し、モーターで走行する。エンジンで直接タイヤを駆動したほうが効率に優れる高速巡航に限って、エンジンと駆動輪の間に設けられたクラッチが直結になる。すなわち、エンジンで走る。旧型フリード・ハイブリッドの1.5リッター・ガソリン・エンジンとモーター内蔵の7速DCTからなるシステム、i-DCDほど、理論上はエンジンをmあわす必要がない。だから燃費がよくて、環境にやさしい。モーター駆動主体だから、静かでレスポンスのよい、BEV同様の乗り味が得られる。という長所がある。 短所もある。旧型フリードのシステムより、モーターがふたつある分、サイズと重量が増えることだ。素人考えだと、DCTがない分、相殺されるように思うけれど、そうではないらしい。7段の歯車よりグルグル巻いたコイルからなるモーターのほうが重いのだ。重量増は当然、衝突安全性能と運動性能に影響をおよぼす。先代から継承したプラットフォームにe:HEVを搭載し、これらの課題をいかにクリアするか。これが開発の山だった。 フロントのオーバーハングが若干延びて、旧型比で全長が45mm長くなっているのはe:HEVをおさめるためだとされる。e:HEVそのものによる重量増は20kg程度、全体で50kgほど重くなっている。そんな話を助手席のエンジニアから聞きながら、筆者は高速周回路の進入路から控えめな全開を試みた。 発電を主目的とするエンジンは、旧型ハイブリッドの1496cc直列4気筒DOHC i-VTECと基本を同じくしつつ、異なるチューンが施されている。最高出力は106ps/6000~6400rpm、最大トルクは127Nm/4500~5000rpmへと、わずかながらおさえられ、駆動用モーターは逆に、それぞれ122ps、253Nmへと大幅に強化されている。SUVの現行ホンダ「ヴェゼル」と数値を見比べると、モーターの最高出力のみ131psから11ps控えになっている。最大7人が乗るミニバンゆえ、より低中速重視のセッティングに変更しているのだ。 しかして印象に残ったのは、全開時のエンジン音の違いである。旧型はエンジン主体で、有段ギアボックスを備えているから、内燃機関に馴染んだ筆者はそっちのほうが気持ちよく感じる。e:HEVはそんなドライバーのフィーリングにも合うように、と加速とエンジンの音量を同調させるべくエンジン回転を上げる。モーターにエネルギーを送るべく発電する必要もある。だけど、エンジン本体のチューンによる違いによって、ごめんなさい。旧型の音のほうがいい。と、筆者なんぞは思っちゃう。 e:HEVのFUN、面白さは街中でこそ味わえる。中間領域、アクセルのオン/オフを繰り返したときのレスポンスの心地よさというのは、クローズのコースになると公道での鬱憤を晴らすべく、つい全開にしがちなドライバーにとっては猫に小判、絵に描いた餅、馬の耳に念仏と申し上げるほかない。アップダウンのあるハンドリング路でピックアップがよさげに思えたものの、旧型のハイブリッドだってモーターのアシストにより、旋回してからの上りも遜色なくヨイのだ。 静粛性と乗り心地は洗練され、確実によくなっている。80km/hでの高速巡航時、静粛性を重視したグッドイヤーの新しいタイヤもあって、あまりに静かなものだから耳を澄ませたくなる。耳を澄ますと、どおん、どおん、という鼓動のような音がかすかに聞こえてくる。これが欠点だと指摘したいのではない。エンジンの、ごく小さなこもり音、ラジオとかをつければ、気にならないレベルの音だからだ。ではあるものの、人間というのは静かになるほど、音が聞こえてくる。だから自動車にとって静粛性はむずかしい。 乗り心地は、サスペンションのフリクション低減により、脚がより軽快に動く感がある。タイヤはクロスターを含め、185/65R18と旧型と同じサイズが選ばれている。ユーザー調査の際、タイヤのサイズはどうなる? という質問があったからだそうで、つまり、フリードの現オーナーが新型に買い替えたあともスタッドレス・タイヤは使い続けられるようにするためだ。ユーザーにとって、うれしい配慮である。