「棚が倒れて下敷きになっていたら…」揺れに耐え、ゆがんだ突っ張り棒 能登地震で被災して気付いた失敗
2024年1月1日に起きた能登半島地震。新潟県上越市の石野正彦さんは高台にある木造一戸建ての自宅1階の居間で長くて大きな揺れに襲われた。石野さんは上越教育大の元教授で、地震発生時は執筆の仕事をしていた。 【図解】地震による石川県の被害状況(5月23日時点)能登地震関連死、30人初認定 避難生活や車中泊で負荷
「東日本大震災の時みたいだ」。身をかがめて揺れが落ち着くのを待ち、2階の様子を見に行った。すると、天井近くまである棚の中に置いていたテレビが床に落下し、飾っていたグラスやプラモデルは散乱して壊れていた。 不幸中の幸いで棚自体は倒れていなかった。目に入った突っ張り棒はゆがみ、なんとか揺れに耐えたことが分かった。この棚は合板ではなく一枚板の製品のためかなり重い。「もし棚が倒れて下敷きになっていたら1人では抜け出せなかっただろう」。 被害が軽微で済んで、突っ張り棒の耐震効果を改めて認識した石野さんだが、実際に被災してみてある失敗に気付いた。(共同通信=松尾聡志) ▽突っ張り棒を取り付ける正解の位置は? 石野さんによると、別の部屋にある本棚も突っ張り棒のおかげで倒れるのを免れた。突っ張り棒は2本のうち1本が吹っ飛んでしまい、もう1本が根元から曲がった状態で持ちこたえていた。 テレビの棚と本棚の突っ張り棒はいずれも、それぞれの部屋の改修に伴って1カ月ほど前に取り付けたばかりだった。インターネット通販のアマゾン・コムで買ったもので、どこのメーカーなのかはあまり意識しなかったという。
失敗だったのは、突っ張り棒の取り付け位置を間違えていたことだ。耐震効果を最大限発揮するには家具の両端、そして壁に近い奥側に取り付けるのが正解なのだが、両端にかなりスペースを空けていたり、手前側にしたりしていた。 「テレビを固定していなかったのも反省点」と石野さん。留め具の取り付けに当たって壁の中のどこに柱梁があるのかを確認する必要があり、作業を後回しにしていた。 ▽安物でもないよりはマシ 突っ張り棒を日本で最初に発売したことで知られる平安伸銅工業(大阪市)の開発部の上田隆久さんは、家具の転倒を防止する突っ張り棒について「安物でも取り付けていないよりはマシ」と話す。上田さんは創業者の時代から同社一筋で約40年。突っ張り棒のことを営業を含めて知り尽くしたベテランだ。 上田さんによると、突っ張り棒の効果を発揮するには「まず家具の背面を壁にぴったりくっつけて置くことが重要だ」という。そして家具と天井の距離を測って寸法が合う突っ張り棒を用意し、家具の両端、かつ壁に近い奥側に取り付けるのが正しい。そうでないと、揺れによって家具の重心が前に傾いて倒れてくるのを受け止めきれない。