「棚が倒れて下敷きになっていたら…」揺れに耐え、ゆがんだ突っ張り棒 能登地震で被災して気付いた失敗
天井の状態をチェックするのも大切だ。突っ張り棒の圧力は50キログラム程度はあるため、ポールの端が柱梁の部分に当たっていないと天井が浮いてきてしまう可能性がある。突っ張り棒を使いたい位置に柱梁がなければ、天井とポールの端の間に「当て板」を挟むことで、「点」ではなく「面」で支えるのがポイントだ。家具の下に敷く転倒防止用の粘着マットを併用すれば強度が高まる。 柱梁の位置を確かめるには、天井をコンコンとたたいていき、やや重い音がすれば柱梁があると判断できる。軽い音ならそこは空洞だ。ホームセンターなどで売っている「下地探し」と呼ばれる測定用の道具も役立つ。 ▽避難ルートにある家具は固定を では、自宅のどの家具に突っ張り棒を使うべきなのだろうか。それなりに費用もかかる中で、上田さんは「避難ルートをふさぐ可能性があるなら固定した方がいい」と話す。阪神淡路大震災は多くの人が就寝中の明け方に発生したため、寝室にある家具を固定する意識が定着したが、東日本大震災や能登半島地震が午後の発生だったのを踏まえたアドバイスだ。廊下や玄関の家具が倒れ、屋外に逃げられないといった事態を避けるためだ。 避難ルートとはそれほど関係ないかもしれないが、上田さんはキッチンの食器棚も注意点に挙げる。「在宅のまま避難生活を送るケースが増えているので、倒れてきた食器棚が当たって水道が壊れたり、キッチンに入れなくなったりすると困る」というのが理由だ。
▽ねじで長さを固定するタイプの方が安全性が高い 安物でいいといっても、どんな突っ張り棒が望ましいのか。ネット通販で検索すると防災用の製品だけでも数多くヒットする。中国には無数にメーカーがあり、あまり聞いたことがないブランドの製品が出回っている。日本企業では平安伸銅工業、アイリスオーヤマ(仙台市)、積水樹脂(大阪市)が大手。平安伸銅やアイリスオーヤマは公的機関での耐震試験の動画も公開している。 突っ張り棒はポールをスライドさせながら天井いっぱいまで押し上げた際に、ねじを回してポールに穴を開けて長さを固定するタイプと、ポールを回して固定するタイプがあるが、上田さんはねじで固定するタイプの安全性が高いと指摘する。回して固定するだけだと時間がたつにつれて緩んでポールが縮む可能性があるためだ。 どのブランドもバネかジャッキで突っ張るという基本構造は変わらないが、取り付けやすくしたり、悪目立ちしないデザインにしたりする競争を続けており、そういった点も選ぶ際に注目するといいという。