知っているようで実は知らない!? 燃料電池の仕組みを「ホンダCR-V e:FCEV」で学ぶ
進化するFCスタックに対し……
新しいホンダのFCスタックでは、こうした工夫と新技術が随所に取り入れられている。例えば水素/空気を通す流路(=電極集合体とセパレーターのすき間)だが、これまではシーリングのため、特殊な金属プレートの上にシリコンゴムを成型し、ゴムの弾性で気密性を確保していた。しかし新型では、2枚の金属プレートによる中空バネ構造を活用(エンジンに詳しい人はメタルガスケットをご想像ください by ホンダ技術者)。一般的な金属プレートとスクリーン印刷加工のマイクロシールの合わせ技で、コストを抑えつつ高い気密性を実現したのである。 また導電性を確保するためのセパレーターの表面処理も、従来のお高い全面金メッキ加工に代えて、耐食性の高いチタン層の上にカーボン膜を物理蒸着(PVDコーティング)させる新工法を採用。反応触媒として用いる白金も、湿度コントロールの高精度化によってセルの耐久性を高めることで、実に80%も使用量を減らすことに成功したという。 このほかにも、FCスタックに空気を送るコンプレッサーの高性能化と、構造の合理化、高湿度運転の実現による加湿器バイパス弁の省略、起動時の水素置換性の向上と、それにともなう水素ポンプの廃止……などなど、補器類も含めたら進化のポイントは本当に書ききれない。 これらの技術と生産性の向上により、新しいFCスタックは以前のものよりコストを3分の1に低減。同時に耐久性を2倍以上に高め、燃料電池が苦手とする低温時の始動性も大幅に改善したという。 さらにホンダでは、このFCスタックからさらにコストを2分の1に減らし、耐久力を2倍に高めた新FCスタックを、2030年を目標に開発。ちまたのディーゼルエンジンと同等の使い勝手&トータルコストを実現すると息巻いているのだ。いやはや。世間では電気自動車(EV)の進化が注目を集めているが、FCEV(というかFCスタック)の革新も目覚ましいなと感嘆した次第である。 しかし、そうなると気になってくるのが、イマイチ進化の感じられない水素タンクである。かさばるうえに形状の自由度もないボンベは、ハードウエアにおけるFCEV最大の弱点だと思うんですが、これはどうにかならんもんなのでしょうか? ……そういえば、ずいぶん昔にダイハツが液体の水加ヒドラジンを使った白金フリーのFCEVを研究していたけど、やっぱり充てんする燃料の側をどうにかしないと、この辺の高効率化はムリなのかも。 ホンダにおかれては、スーパーでミラクルなFCスタックを完成させた暁には、ぜひそちらのほうでもパワー・オブ・ドリームを見せていただきたい。 (文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=郡大二郎、メルセデス・ベンツ、BMW/編集=堀田剛資)
webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>