肩から岩が生えているような上腕~須山翔太郎(前編)【筋肉マニアのビルダー解体筋書】
YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、「カリスマ」須山翔太郎選手です。 【フォト&ムービー】須山翔太郎のステージショット集
三頭筋にクロワッサン
今回は僕の永遠の憧れであり、最も敬愛するボディビルダー須山翔太郎選手を紹介していきたいと思います。須山さんは1981年生まれの現在43歳で、コンテストデビューは17歳の時でした。当時、最年少である22歳で東京ボディビル選手権(2004年)を優勝されたことで、大きな話題を呼びました。 日本ボディビル選手権には2007年から参戦されていて、そこから16年連続でファイナリスト(上位12人)入りをされているレジェンドです。昨年の日本選手権は惜しくも11位という結果に終わってしまいましたが、それまではずっと表彰台を争っていた選手で、2017年と2019年においては準優勝を果たされています。 須山さんの一番の強みは上腕です。二頭筋も三頭筋もまんべんなく発達しているのですが、ピークの高さにおいてものすごいものを持っていて、特にフロントダブルバイセップスをとった時の上腕のメリハリは目を見張るものがあります。上腕のサイズや形が良いだけではなく、大円筋の強さやウエストの細さもポーズの見栄えが良いことに起因していると思います。また、大腿四頭筋に関してもしっかり丸みとサイズを備えていて、腕が長いということもあり、フロントポーズの迫力は本当にすごいです。
三頭筋の質感においてもとんでもないものを持っていて、本当に彫刻で掘ったような腕をされているんですよね。実際に、須山さんの上腕を見せてもらったことあるのですが、肩から岩が生えているんじゃないかと勘違いするぐらい、とんでもないサイズと質感をされていました。特に、バックラットスプレッドをとった時の三頭筋のストリエーションの入り方に関しては、唯一無二のものを持っているんじゃないかと思います。ご本人もInstagramで「三頭筋にクロワッサン」と投稿されていたことがあったほどです。 上腕と共にもう一つ強みになっているのが背中です。広背筋下部は弱点になっていますが、上背部の筋肉の詰まり方はとてつもないです。大円筋と僧帽筋上部、中部がしっかりと発達しているので、背中に大きい目が2つ付いているような状態になっています。背中の凹凸感という部分において、須山さんは日本トップクラスのものを持っている選手だと思います。 上腕と背中の強さの他にも、全体的な筋肉の丸みと「体重以上の見た目」も強みの一つです。おそらく、水分量で筋肉の丸みが出やすいタイプで、横川尚隆選手や吉岡賢輝選手なんかもそうだと思うのですが、体重以上に体がものすごく大きく見える選手です。ただ、水分量で体が膨らみやすいというのは、裏を返すとドライな質感が出にくいということです。 須山さんは一時期、仕上がり体重をより落としたことで筋肉のメリハリと質感がかなり改善され、表彰台の常連に上り詰めました。しかし、体重を落としたことで、本来の強みである筋肉の丸みが失われ、近年はご自身の納得いく体ではなかったように思われました。ところが、昨年の日本選手権では、張りと丸みがしっかり残った昔の身体の須山さんが帰ってきていて、僕は大興奮しました。 (後編に続く)
写真/木村雄大