ふとしたことが大事件に発展する! 巻き込まれ映画5選!
スーツケースを間違えただけなのに……!『フランティック』
学会に出席するためパリを訪れた医師とその妻が、不可解な事件へ巻き込まれる秀作サスペンス。長旅の疲れを抱えたままホテルにチェックインした二人は、どうやら自分たちが同型同色の他人のスーツケースを間違って持ち帰ってしまったことに気づき……とまあ、ここまでは海外旅行でよくある話だが、その後、ふと目を離した隙に、妻が忽然と姿を消してしまってからはミステリアスな展開の連続。警察や大使館も頼りにならない中、主人公が慣れない言語に苦労しながら真実へにじり寄る、いわゆる”ヒッチコック”スタイルの際立った一作だ。 特に注目したいのがポランスキー監督ならではの“水”の表現。物語の序盤で、妻が何かを懸命に訴えかける声は、シャワー音にかき消され全く聞こえない。その上、本作中でいちばんゾッとする場面では、なぜか背後にポタポタと水の滴る音が絶え間なく響く。かくも最初から最後まで身と心が湿り気を帯びていくような不気味さが、唯一無二の切迫感に拍車をかけている。
知らぬうちに極秘ファイルを持っていた!『エネミー・オブ・アメリカ』
妻へのクリスマスの贈り物を何にしようか悩んでいた弁護士のディーン(ウィル・スミス)は、ふとした思いつきでランジェリー・ショップへ立ち寄る。ここで気づかぬうちに、とある男から極秘ファイルを託されたことで状況は一変し、NSA(国家安全保障局)から地獄の果てまで追われる身に―――。スピーディーなサスペンス演出で知られる名匠トニー・スコットが手がけているだけあり、NSAが盗聴、ハッキング、衛星監視システムを駆使して主人公を極限まで追い詰めていく超絶カメラワークは、いま見ても20年以上前の映画とは思えないほど臨場感がとてつもない。 一方、崖っぷちのスミスが謎の男ブリル(ジーン・ハックマン)に助けを求めてからは、映画が突如として”バディ・ムービー”へと転調を遂げ、相手の裏をかいた反撃に胸が高鳴りっぱなし。名優ハックマンは、かつて『カンバセーション…盗聴…』(74)でもこれと似た役柄を演じており、まるで二作が繋がっているかのような印象を味わえるのも映画好きにはたまらないポイントだ。