ふとしたことが大事件に発展する! 巻き込まれ映画5選!
接触事故をきっかけに逆恨みデッドヒート!『チェンジング・レーン』
人間ドラマの名手ロジャー・ミッシェル監督が、世界的ヒットを遂げた『ノッティングヒルの恋人』(99)の次作品として挑んだ予測不能サスペンス。ある日、二人の男がそれぞれの事情を抱えて裁判所へ急ぐ途中、思いがけず接触事故を起こしたのをきっかけに”人生のどん底”がはじまっていく。積み重なった苦痛に顔を歪めながら、彼らは思う。「すべてアイツのせいだ!!」。 そこから繰り広げられる、己の人格を投げ打った激突ぶりがすごい。ベン・アフレックがハッキングで相手の銀行口座を空っぽ状態に追いやると、やられた側のサミュエル・L・ジャクソンも躊躇なく相手の車のブレーキに細工を施す・・・などなど、鬼のような形相と「アイツが悪い!」の論理はエスカレートするばかり。でも、彼らは決して根っからの悪人というわけではない。二人が自分を省みて、掛け違えたボタンをきちんと修復できるのかが本作の重要なところ。まさに”迷える仔羊”とでも呼ぶべき等身大の人間像を、ベン&サミュエルが味わい深く演じている。
立ち寄ったカフェで迎える不条理な夜『アフター・アワーズ』
単調なパソコン業務を終えた主人公が、街角のカフェで一人の女性と出会う---。そんなロマンティックな風景が、いつしか不条理極まりない夜へと変わるブラックコメディ。ストーリーはずっと螺旋階段を登り降りしているみたいだし、登場人物もとびきりの変人ばかり。交わす言葉はみんなチグハグで、こちらの真剣な問いかけにちっとも向き合おうとしてくれない。そのくせ逆恨みして、なぜか主人公を執念深く追いかけ回す始末。まるでカフカ的な世界を80年代ニューヨークへ置き換えたかのような場面の連続である。 実は当時、スコセッシ監督は、長年温めた大作が一旦中止に追い込まれ、大きな挫折を味わっていた頃だった。そんな矢先にこの脚本と出会ったのはまさに運命。自身の混沌と不条理を投影するかのような本作を、驚異のバイタリティで、しかもごく低予算で撮り上げたのだとか。その結果、カンヌ映画祭では監督賞を受賞。巨匠に映画づくりの楽しさを再認識させた作品であることを思うと、この出口なしの不条理さがむしろ輝いて見えるはずだ。