ボールを挟んで走る激痛 登録抹消→病院でも治らず…176勝左腕が抱えていた“謎”
星野伸之氏は1996年、開幕から3連続完投も…原因不明の痛みが襲った
約1か月の離脱も乗り越えた。元オリックスエース左腕の星野伸之氏(野球評論家)はプロ13年目の1996年、13勝5敗の勝率.722で1989年以来、2度目となる最高勝率のタイトルを獲得した。防御率はキャリアハイの3.05でオリックスの2年連続パ・リーグ制覇に貢献したが、この年は序盤に謎の故障に苦しんでいた。「フォークボールを投げる時に痛みが出るようになったんです」。そこから復帰したわけだが、これには不思議なことがあったという。 【写真】“ウワァァ”… 痛みに思わず絶叫、悲痛な一撃にファンも涙 仰木彬監督率いるオリックスは1995年にリーグ制覇を果たした。その年の1月17日に阪神・淡路大震災が発生。「がんばろうKOBE」を合い言葉に成し遂げた感動の優勝だった。だが、日本シリーズはヤクルトに1勝4敗で敗れた。星野氏は第3戦(10月24日、神宮)に先発して4回を1失点。第5戦(10月26日、神宮)は1-2の3回2死満塁、打者が秦真司外野手の場面に2番手で登板して1/3回を無失点と奮投したが、勝利にはつながらなかった。 「第5戦は緊張しましたね。これを抑えなかったら試合が終わってしまうという大事な場面でのリリーフでしたから。カーブ、真っ直ぐ、フォーク、フォークで三振だったかな。久しぶりでしたね。口の中が乾いたのは……」。その試合に1-3で敗れて、日本一を逃したが、星野氏にとっては大舞台での貴重な経験になったようだ。“次こそは日本一に”との気持ちも高めたのは言うまでもない。 翌1996年、オリックスはパ・リーグ連覇を果たした。巨人との日本シリーズは4勝1敗。1年前にできなかった日本一も達成した。星野氏もレギュラーシーズンに22登板、13勝5敗で最高勝率のタイトルを獲得し、日本シリーズも第1戦と第5戦に先発して好投した。しかし、この年も決してすべてが順調だったわけではない。 スタートは最高だった。3月31日の日本ハム戦(GS神戸)では2年ぶり5度目の開幕投手を務め、1-0の4安打無四球完封勝利。初回に打線が挙げた1点を守り、日本ハム・岩本勉投手との投げ合いを制した。「開幕戦は96球で終わった。“すみ1”の1-0でね。2時間かからなかったと思います」。中6日で先発した4月7日のロッテ戦(千葉)も4安打完封の1-0。3試合目の4月14日の西武戦(GS神戸)は延長11回を1失点完投。サヨナラ勝ちで3勝目を飾った。 2完封を含む3試合連続完投で3勝0敗、防御率0.31。抜群の成績だったが、ここでアクシデントが発生した。「フォークボールを、それまでよりも(指に)力を入れて投げたらグッと落ちて、それで開幕から完封できて、これいいなと思って投げていたら、(ボールを)挟んだ瞬間に痛みが出るようになったんです。真っ直ぐとカーブは全然投げられたんですけどね」。星野氏は山田久志投手コーチに相談したという。