佐藤ママは、子どもが反抗期の時にはどうしていたの?「返事はなくても、親が一方的に話せばいい」
子どもが聞いて楽しいことを話す
――子どもは話さない、親も聞かないとなると、親子のコミュニケーションが少なくなってしまいそうで、悩んでしまいますが。 私自身は毎日、かなりしゃべっていましたよ。子どもたちがリビングで勉強しているとき、私は新聞を読んでいたのですが、面白い記事とか、子どもたちに知っていてほしい記事を見つけたら、「ちょっとみんな聞いて」って言うんです。長男は振り向いて、ほかの3人は振り向かないのですが、長男が「お母さんが語りたがっているから聞いてやれ」って。仕方ないなという感じで3人とも振り向いて、私が話し終わったら、やれやれという感じで、勉強に戻っていました。 ――一方的に話しているだけでも、コミュニケーションは取れているのですか。 子どもたちの耳には入っているから、返事はなくてもいいんです。ただ、話題は選ばないといけないと思います。父親や近所の人の愚痴とか、子どもたちのテストの点数のことは言わないです。子どもたちが聞いて楽しいことじゃないと。 子どもたちよりも何十年か長く生きていますから、考えてきたことはたくさんあるじゃないですか。子どもは18歳になったら自立して、私の目の前からいなくなるから、伝えるべきことは伝えておかないと、と思っていました。
たった一度の娘からの反抗
――娘さんの場合、思春期のときはどうでしたか。 反抗というか、一度だけもめたことがあります。息子3人は高3の塾の夏期講習には全く行っていなくて、娘にも「行く必要ないよね」と言ったら、「みんな行くのだから行かないわけにはいかない」って言うんですよ。娘は夏の時点で勉強はかなり仕上がっていて、私がファイリングした過去問があるので、「家でそれをやればいいし、暑い中、1時間以上かけて行くのは無駄」と言ったのですが、「お兄ちゃんたち3人がそれで受かったからといって、4人目が受かるとは限らない」と言い返されました。「ママが責任もって受からせるから、言うこと聞いてよ」って言い合いになり、結局、経験者に聞いてみようと息子たちに連絡したら、3人とも「ママの言うとおりにしたほうが効率いいぞ」と言ったんです。 ただ、次男が私に「ずっと家にいたら息も詰まるだろうから、2回は行かせてやってくれ」と話しました。それで2日だけ行かせることにして、娘も納得しました。娘が私に反発したのは意外でしたね。 ――「自分だけ受からなかったらどうしよう」というプレッシャーが、娘さんにはあったのでしょうか。 そういうプレッシャーが、というより、息子たちは進学して家を出ていたので、夏休みの間中、私と娘の2人きりだと、息が詰まるということだったのだと思います。塾に行けば、友達とおしゃべりできますから。 ――言い合いになったときに、息子さんたちに間に入ってもらったのがよかったのですね。 もし兄弟がいなければ、父親に入ってもらうとかね。一対一だと、売り言葉に買い言葉みたいになってしまいますから。息子たちは娘に「18歳まではママの言うとおりにして合格させてもらって、そのあとに反抗すればいい」ってアドバイスしていました(笑)。 ――「ママの言うとおりにしなさい」と言われて、そうできる子は少ないかもしれません。 子どもたちが小学生くらいのときから、漢字や計算の小テストも全部寄り添ってきましたから、「勉強に関してはママの言うとおりにしたらいい点が取れる」という信頼関係はできていたのかもしれません。 ――子どもの反抗期に悩む親にアドバイスはありますか。 まず、親の人生と子どもの人生は全く違うものだという覚悟は必要だと思います。私は子どもたちが小さいころから、20歳になった子どもの姿を想像しながら子育てをしてきました。小さな子どもだから何を言ってもいいわけではなくて、子どもが大人になって振り返ったときに「許せない」と感じるようなことは言わないことです。思春期は大人に近づいているわけですから、大人同士の付き合いに変えていかなければいけないと思います。 <プロフィル> 佐藤亮子(さとう・りょうこ)/大分県生まれ。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師を務める。結婚後は夫の勤務先である奈良県に移り、専業主婦として長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校を経て東京大学理科三類に進学。長女は洛南高等学校附属中学・洛南高等学校を経て、理科三類に進学した。現在は4人とも医師として活躍している(長女は研修医)。その育児法、教育法に注目が集まり、進学塾「浜学園」のアドバイザーを務めながら、子育てや勉強、受験をテーマに全国で講演を行っている。著書に『三男一女東大理Ⅲ合格!佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』(朝日新聞出版)など。
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