韓国「非常戒厳」直後の国会で何が起きていたのか―「ルポ」内部に入った記者が見て、感じたこと 尹大統領が信じたものは?議事堂を巡る攻防戦の経過
国会関係者は兵士に向けて「戒厳は終わった。あなたたちは逮捕される可能性がある」と大声で告げた。ほどなくして与野党の代表が非常戒厳の「効力は失われた」と表明した。決議を終えた後、床に寝込む議員秘書もいた。 「もう(国民は)誰も尹氏を大統領と考えないだろう」。ある野党議員は報道陣に吐き捨てるように言った。 尹氏がさらなる強硬策に出る懸念もあったが、午前4時半ごろ、尹氏は「戒厳を解除する」と発表。国会内の報道陣らは「一体なんだったんだ」とあきれた声とともに安堵の表情を浮かべた。与党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は緊張した面持ちで「国民に申し訳ない」と語った。 私は午前7時ごろ、タクシーでいったん自宅に帰り、病院へ向かった。数針を縫った。 ▽いつもと同じ朝か、違う朝か? 眠気は感じなかった。12月4日朝、会社員や学生は通常通り通勤、通学した。だが、戒厳が出される前とは違う韓国に住んでいるような気分の人も多いのではないか、とも思う。私も支局で作業した後、国会へ。与野党の議員らの取材を続けた。
合間を縫って、前夜に国会前に友人らと駆け付けていた大学1年の白善宇(ペク・ソンウ)さん(19)に、午後に電話をかけた。白さんは「昔、韓国の民主主義を守ったのは(当時の)学生たちだった。今は自分たちがやる番だ。国際社会にこの事態を知らせてください」と言った。 ▽ノーベル賞作家、ハン・ガンさんの見方は 国会内部に進入したのは、本来は北朝鮮の政権中枢部の暗殺などを任務とする最精鋭の707特殊任務団だった。朝鮮日報が12月6日に報じた兵士らのインタビューでは、「国民に申し訳なく、私たちに驚いた市民らの顔と表情が忘れられない」「やろうと思えば10~15分でできる作戦だったが、わざと走らないで移動した」といった証言がある。 韓国の小説家の韓江(ハン・ガン)さんがスウェーデンの首都ストックホルムで12月6日、ノーベル文学賞受賞に関する記者会見を行った。韓国国会の事態について、映像で見ていた現場の様子から、兵士らがわざと消極的に動いていたのではないかと話し「命令が下された人にとっては消極的な対応だったかもしれないが、自身で考え、判断し、痛みを感じながら解決策を探ろうという積極的な行為だったと思う」と語った。 ▽弾劾案が廃案になった国会、取り囲んだ15万人