「2024年物流問題」で揺れる現場の生の声を清水和夫が聞く。働き方改革を自動運転やトラックGメンが救うとは?
業界イジメではなく、ドライバーの命を守るための働き方改革
清水:政府は何をやりたいんですかね? ドライバーを守りたい? 吉田:脳疾患とか心疾患で亡くなる人が、トラックのドライバーには全産業のなかでもずば抜けて高いんです。 清水:そういう背景があるんだ。 吉田:例えば建設やったら墜落・転落事故とかがあるじゃないですか。運送業のドライバーっていうのは心疾患、脳疾患の健康被害がすごく多い。 清水:過酷なんですね。その改善をするために、働き方改革をしているんですね。 吉田:労働時間を短くすれば、単純に家でよく寝て休息を取れば健康の被害も減るだろうというのは、それは確かに正しいと思うんです。でも、実際に今年の4月1日から「9時間休息しなさい」ということに決まったんです。 だけど実際、家で9時間休息して、じゃあ翌日の朝から積んで東京に行きましたとかになると、今度はまた東京で泊らないといけなくなる。1ヵ月間のトータルのラウンド回数が減ってしまうんですよね。そうなってくると、月々の売上げが、今まで例えば関西-関東8往復行けていたのが6往復とかになると、1回あたりの運賃が変わらなければやっぱり月々の売上げが減る。となると、ドライバーに同じ給料を払えないから、じゃあドライバーはどうするの?って言ったら、転職したり離職したりしていく。 清水:でもそれは、そういう制度を取り入れたらそうなることは予測できたんじゃないですか? 吉田:それはそうやと思うんですけど、やっぱり机上の理論というか。国は元々10回走っていたのが8回になって、8回になったのが6回になったとしても、1回あたりの単価を交渉して上げていけば、あとはその通りにいけるんじゃないの?という考えが多分あると思う。 だから、今まで関西-関東間を往復して、例えば15万円頂いていたトラックがあって、それが月10回往復したら150万円じゃないですか。それを8回に減らしなさいって言ったら120万円になる。その120万円でトラックのリース代とか償却代とかは変わらないじゃないですか。燃料代は下がるけど、ドライバーって走れば走る数で給料が決まってくるというところが圧倒的に多いので。そこのところはちょっとねじれが生じている感じですね。 清水:その話を聞くと、なんかこう出口がない感じがあるけどね。 ドライバーさんの健康のことだけを考えると、事業全体が儲からなくなると。すると給料払えなくなる。運転さんは休めるけど賃金は下がる。あんまりいいソリューションじゃないと思うんだけどね。全方位でこうウインウインになるようなやり方っていうのは、運賃上げればいいのかもしれないけど。全体をどうやって最適化してくんでしょうか。スタートしたばっかりだと思うんですけど。