兵庫県・斎藤知事の“パワハラ疑惑”で設置…「百条委員会」の強大な“権限と機能”とは!? 元議員の弁護士に聞く
猪瀬直樹氏が東京都知事を辞任した「引き金」にも
このように事実上の制裁の機能を果たすからこそ、百条委員会が設置される前に辞職した例もある。2013年の東京都の猪瀬直樹知事(当時)の公職選挙法違反疑惑事件である。 猪瀬氏に、2012年の東京都知事選挙の直前に医療法人から5000万円の資金提供を受けたという公職選挙法違反の疑惑が持ち上がった。都議会の質疑で、猪瀬氏が5000万円をバッグで運んだと弁明し、猪瀬氏がそのバッグの実物に5000万円分の札束に見立てた物体を詰め込もうとして、入りきらなかったというやりとりが放映されたのは記憶に新しい。 三葛弁護士:「都議会は、猪瀬氏の件で百条委員会の設置を決めました。都知事選挙で猪瀬氏を支援した第一会派の自民党までが、この動きに加わりました。 これを受け、猪瀬氏は、百条委員会が設置される前に都議会議長あてに辞表を提出しました。 自身の与党ともいえる最大会派が百条委員会の設置の動きに加わったことに加え、百条委員会が開かれれば、刑罰を背景に証言の義務を負うので、それも大きな理由だったと考えられます。 つまり、設置されること自体がプレッシャーとなるのです」 なお、猪瀬氏はその後、公職選挙法の選挙資金収支報告書虚偽記載の罪で罰金50万円の刑を受け、5年間の公民権停止となっている。
政治家が百条委員会にかけられた場合の「心構え」とは
兵庫県では、斎藤知事のパワハラ疑惑について既に百条委員会が開かれているが、知事は辞任しない意向を示している。 最後に、三葛弁護士に、仮に百条委員会にかけられた政治家から相談を受けた場合、弁護士としてどのようなアドバイスをするか聞いた。 三葛弁護士:「説明責任が重要なのは言うまでもありませんが、私は、地方議員を経験した立場からも、法的責任だけではなく、道義的・社会的責任の取り方も重要だと考えます。そのような肌感覚を持っています。 つまり、偽証にあたらなければいい、刑事罰を避けられればいい、という法律上の問題だけでは済まない面があるということです。一方、議員や首長を辞職することで社会的責任を果たしたとばかりに不起訴になるケースも見られます。 対応を誤ると、近しい立場の政治家や政党等に迷惑をかけるばかりか、辞職やむなしとなった場合の後継者にとっても大きなマイナスからのスタートとなります。それらを十分に考慮したうえで、どのような行動をとるべきか判断することが大切です」
弁護士JP編集部