期待していた自動車の不振…「トランプショック」に耐えられる韓国企業はない
韓国の産業界は今、大企業、中堅、中小企業を問わず危機感が大きい。輸出中心の大企業は保護貿易主義を掲げる米トランプ政権2期目のスタートに伴う急激な政策変化を最も懸念している。トランプ次期大統領は選挙戦をを通じ、全ての輸入品に10~20%の一律関税、中国製品には60%の追加関税を課すと表明するなど大幅な政策変化を予告している状態だ。既に石油化学、鉄鋼、自動車など業種で警告ランプが灯っている状況だが、さらにトランプ流の「爆弾政策」が加わるのではないかと緊張している。韓国では内需低迷も長期化し、中小企業と零細事業者に関係する経済統計は2024年初めから過去最悪を更新している。財界関係者は「こうした中でトランプショックまで現実になれば、これ以上持ちこたえられる企業などあるのかというムードだ」と話した。 【グラフ】韓国の輸出の伸び推移と2025年成長率見通し
■危機に陥った韓国の主力産業 中国発の供給過剰や原油高、ウォン安などが韓国の主力産業を締め付ける主な要因として挙げられる。特に韓国の10大輸出産業に数えられる鉄鋼、石油化学業界が深刻だ。 鉄鋼は世界的な不況の中で中国の低価格攻勢、トランプ政権2期目の関税爆弾に対する懸念、電気料金引き上げが重なり、既に大規模な構造調整と減産に突入している。鉄鋼業界は政府レベルの補助金支援、産業用電気料金引き下げなどの緊急対策を要求しているが、果たして実現するかは予断を許さない。 構造調整が急がれる石油化学業界は、韓国政局の混乱による政権空白期で体質改善のためのゴールデンタイムを逃しかねないと懸念している。韓国政府は12月23日、産業競争力強化関係閣僚会議を開き、自発的な構造調整を骨子とした「石油化学業界競争力強化策」を発表したが、業界の期待は小さい。弾劾政局で政府の主導権が大幅に弱まっている上、構造調整の核となる「ビッグディール」も現実的な困難に直面するとみられるからだ。 かろうじて善戦してきた自動車まで上昇の勢いが鈍っている。2024年の韓国の新車販売台数は2013年以来11年ぶりの少なさとなる約164万台が見込まれている。輸出も前年比1%増にとどまり、2025年は前年比3.1%減少するとの見方が示されている。電気自動車(EV)の一時的な需要低迷が最大の原因だ。 電池業界も米政府の補助金を見込んで、数兆ウォン単位の大規模投資を行ったが、トランプ政権2期目がEV補助金削減とインフレ抑制法による優遇削減に踏み切るという不確実性に悩んでいる。財界関係者は「政界がたとえ対立する時であっても、経済を再生するために与野党による協議体など何か手を打つべきではないか」と話した。