「ドヤ顔」外交と「弱気」内政 トランプ政権 試練の2019年“2つの顔”
●米中対立の行方
米中に関しては、世論がどこにあるのか見極めている部分もあろう。 現状ではおそらく貿易問題と安保の切り離しが進められるのではないだろうか。基本的には昨年10月のペンス副大統領のハドソン研究所での演説でふれたような強硬路線が堅持されるのではないだろうか。ファーウェイ副社長逮捕にみられるように、5G(第5世代移動通信システム)ネットワークのような広範な軍事利用が想定されているハイテク技術については、トランプ政権はぶれずにさらなる圧力をかけてくるとみられる。ハイテク以外の分野でも、中国の拡張主義に対抗するため、南シナ海での米海軍の駆逐艦の航行などの「航行の自由作戦」は今後も展開するとみられている。実際の軍事衝突の可能性までは分からないが、予期せぬ米中対立の可能性はさらに高まっていくだろう。 一方で、貿易問題については、アメリカの経済にとって大きなマイナスとなる前に小さな譲歩を中国から勝ち取ることによって、「順調」と常にアピールするような構造になるとみられる。このように貿易の方は、米中の小さな妥協もあり得るかもしれない。
------------------------------ ■前嶋和弘(まえしま・かずひろ) 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後、ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)