「ドヤ顔」外交と「弱気」内政 トランプ政権 試練の2019年“2つの顔”
●シリア・アフガン・北朝鮮
「分割政府」で内政は停滞する。トランプ氏の行動原理には2020年の再選があるため、比較的自由の利く外交でポイントを稼ぐという展開が予想される。 ポイント稼ぎの典型例がシリアからの撤退である。アメリカの安全保障関係者の主流といえる意見は、シリアやアフガニスタンでのアメリカの継続的な関与がないとその地域がさらに不安定になり、結局は反米テロリストを生んでしまうため、アメリカの存在は欠かせないというものだ。ただ、トランプ氏の支持者の間ではシリアやアフガニスタンにアメリカが莫大な予算を割いて介入を続けることに対する反発もある。その動きを察知し、トランプ氏は「アメリカはもはや世界の警察官ではない」として、シリアからの撤退を決め、アフガニスタンからも撤退を検討しているという。すでに世界最大の産油国となっているアメリカにとって、エネルギーの中東依存度を減らしても対応できるのではないか、というのが、中東撤退論の背景にある。 シリアやアフガニスタンでのアメリカの継続的な関与の重要性を強調したマティス前国防長官については、当初2月に辞任する予定だったが、トランプ大統領は昨年末に解雇した。トランプ氏は人事そのものを支持固めのメディアイベントと考えていると思われる。その意味でマティス氏が居座ることは世論にとってマイナスと考え、早く退場させたのではないか。ただ、軍関係者から非常に尊敬されているマティス氏の解任は、軍関係者からの信頼が落ちるなどの余波もあるかもしれない。マティス氏というストッパーが去ってトランプ氏は「暴走する」という見方もあるが、安全保障チームはそもそもトランプ氏の意向を忖度して動いてきたという流れもある。 いずれにしろ、実際にシリア情勢が混迷を極める可能性もある。トルコはクルドに対する総攻撃を準備しているといわれており、シリアからの米軍撤退後を見据えた動きが少しずつ加速している。 北朝鮮問題も妥協的な動きを見せる可能性もある。北朝鮮に非核化を約束させ、アメリカ国民に「ミサイルはもう飛んでこない」と訴えることができる状況を作れればよかったため、昨年の中間選挙対策としては6月12日の米朝首脳会談の成果で十分だった。ただ、今後は2020年の再選に向けてポイントを稼ぐべく、北朝鮮に査察を認めさせるなどの手は順次打っていくとみられる。 一方で、北朝鮮政策について、これまではかなり秘密裏に行われた交渉などについて、関係者が議会公聴会に呼び出され、説明を要求される場面も出てくるかもしれない。特に、北朝鮮との交渉で具体的な成果が見られなければ、議会側のフラストレーションも高まるため、頻繁な公聴会が開かれる可能性もある。 現段階ではまだ遠い先に見えるが、米朝の関係が進展する中で、「在韓米軍の削減や撤退」はいずれはみえてくるシナリオかもしれない。