「ドヤ顔」外交と「弱気」内政 トランプ政権 試練の2019年“2つの顔”
●ロシア疑惑追及
中でも下院民主党にとって優先順位が高いのが2016年大統領選挙のロシア疑惑の解明である。発端は2016年のアメリカ大統領選挙にロシアがサイバー攻撃などを通じて干渉したとされる問題だが、「トランプ陣営とロシアの共謀はあったのか」と「トランプ政権発足後、FBIの捜査に対してトランプ大統領による司法妨害があったのか」が焦点となり、モラー特別検察官の捜査が続いている。 「共謀」ではなく「司法妨害」とするのか、どちらの嫌疑も十分ではないとするのか。最終的にトランプ大統領自身の関与がどこまで具体的な証拠をもって証明できるかがポイントであるのはいうまでもない。それを決めるのはFBIの捜査の進展具合にかかっているが、何よりも議会で下院の多数派を奪還した民主党側の思惑が重要になる。 下院で多数派が賛同すれば弾劾手続きがスタートする。中間選挙の結果を受けて下院で民主党が多数派を奪還しているため、手続きまでは、やろうと思えば可能だろう。ただ、いまのところ、国民の世論も二分している。共和党が多数派の上院で3分の2以上を占めており、弾劾が成立するかはかなり疑問だ。 逆に言えば、トランプ大統領にとって2019年の最大の試練がこのロシア疑惑をどうかわすのかに尽きる。例えば大統領が証人として喚問された際にいつものような不規則発言をした場合、偽証に問われるかもしれない。この「偽証による司法妨害」の罠には、ビル・クリントン元大統領がひっかかってしまい、また、下院での弾劾手続き開始となった。様々な「証拠」を突き付けられることにトランプ氏はうんざりするだろう。その中でどれだけ冷静でいられるかも、大統領にとっては疑惑を乗り越えるための大きい鍵となる。 トランプ大統領は、今回の上下両院のねじれにより政策運営は難しくなった一方で、2020年の再選に向けて戦いやすくなったとも言える。民主党を「敵」に仕立てることで、米国に巣食う諸問題に立ち向かう大統領という構図を演出しやすくなるからだ。移民問題やインフラ投資、規制緩和など民主党が反対すればするだけ、この対立構造がトランプ氏にとって追い風になるかもしれない。その意味で、民主党としてはいつ、どのように弾劾の手続きを進めるべきか極めて難しい選択になる。