自転車業界で「さまざまなテスト」が開始!?“新しい自転車業界のリーダーズ”栗村修が解説「2024年の注目トピックス」
◆2024年の展望②「ツアー・オブ・ジャパン」が変化!
野島:『栗村修の学べる自転車ニュース 2024年の展望編』、2つ目のテーマはなんでしょう? 栗村:国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」、新たな形に向けてテストいたします! 野島:おぉ~、それは期待できますね! 栗村さん、解説をお願いします。 栗村:2024年で26回目の開催を迎える「ツアー・オブ・ジャパン」ですが、昨年までは“UCI”、国際自転車競技連合のクラスが「1クラス」で開催していたのですが、2024年はあえてワンランク下げた「2クラス」にします。 これは日本の自転車ロードレース界全体の構造をデザインし直そうということで、クラスダウンにはなりますが「2クラス」に下げることでクラブチーム、例えば大学生のチームが参加できたり、出場できる選手の幅が広がります。 一方、世界最高クラスのワールドチームは出場できなくなるんですけど、そういったチームは近年「ツアー・オブ・ジャパン」には出場していなかったので、あえてクラスを下げることで世界中の若手トップ選手を集め、未来につながるようなレースにしていきたいということでございます。 野島:これはかなり思い切りましたね。 栗村:そうですね。SNSで発表したときはボッコボコにやられました(笑)。 野島:僕的には英断だと思いますけどね。 栗村:単純にクラスダウンというのは(自転車に)詳しい方が見てもツッコミどころがある判断として見えたところもあると思います。 でも今、国内のレース界で何が起きているかといえば、選手の高齢化と外国人選手の問題。外国人選手でポイントを獲得し、レースの出場権を取ろうとするところが一部あるんですよね。その結果、何が起きているかというと日本の若手選手の育成が構造的にしづらくなっているんです。 そこを変えていこうというのが「ツアー・オブ・ジャパン」の戦略的クラスダウンで、実際に効果が出たり、ご理解いただくまでには時間がかかると思いますが、愚直に進めていきたいと思っています。 野島:確かに育成という面では、「2クラス」になることでメリットはありますよね。 栗村:とはいえ、「ツアー・オブ・ジャパン」はエンターテインメント・スポーツイベントなので、育成に振ると見る楽しさやお祭り感を損なうところもあります。そのバランスは難しいんですが、やはり「ツアー・オブ・ジャパン」というレースは歴史的に見ても、これを走った後に世界のトップスターになった選手がすごく多いんです。 例えば、クリス・フルーム(ツール・ド・フランスで4回の優勝経験がある世界的なライダー)も「ツアー・オブ・ジャパン」でステージ優勝していますし、そういった“登竜門的レース”というDNAをもう一度呼び起こしたいという僕自身の思いもあります。 野島:これは以前から考えていたことなんですか? 栗村:本当は「ツアー・オブ・ジャパン」独自でやるというより、日本のレース界全体でデザインし直さないといけないんですけど、なかなかそれは実現できないので、まずは「ツアー・オブ・ジャパン」でしっかりと再起動していきたいなと。 そんなに昔から考えていたわけではなく、「ツアー・オブ・ジャパン」自体はどんどん上にいく絵を少し前は思い描いていました。ただ、レースが上にいっても選手やチームがついてこないという現象が起きてしまったんです。 そのアジャストというか、やはり1つのテストですね。どんな結果が待っているかわかりませんが、惰性でいくよりはしっかりと新しい取り組みを始めようということで決断した感じです。 野島:進化のための動きという感じはします。 栗村:変化する過程のなかで、必ず何かしら掴むものがあると思います。あとはメッセージ。日本の若手をどんどん育てていこうと、そういうメッセージを送りたいと思っています。 野島:ファンとしても楽しみにしております!