あなたの信じた「物語」って何ですか? 陰謀論に陥ったことのある人たちに聞いてみた 「社会への違和感」「よく分からない正義感」
―どういうことか。 「社会不安や政治不信により、何を信じていいのか分からなくなってくる中で『こいつらが背後にいる』と決めつける陰謀論に、多くの人がなびいていく。人類は陰謀を繰り返してきたという歴史観や個人の哲学が確立されておらず、免疫がないように思える」 ―免疫とは。 「ムーの読者は陰謀史観について詳しい人が多く、最近の陰謀論に触れても『まだまだ甘い。もっと裏があるはず』と、どこか突き放して見る余裕がある。一つのことが絶対に正しいと思うのではなく、1%のニュートラルを持つのがムー的な物の見方であり、陰謀論への免疫だ」 ―陰謀論には「真実」と断定する言葉が並ぶ。 「これが正しいと断言した段階で、人間は思考停止に陥る。99%正しいと思っても、ひょっとしたら違うかもしれないと、常に判断を保留し、別の答えがあるという可能性を少しでも残しておくべきだ。これは陰謀論を批判する側も同じで、あり得ないと断言して攻撃しても、反発しか返ってこない。そうなると、逆に陰謀論を広める側の思うつぼとなる」
―なぜ「真実」と信じてしまうのか。 「うその中に、本当のことをほんの少し混ぜると、人々は真実であると思い込んでしまう。政府のプロパガンダも陰謀論も、その手法は同じだ」 ―ムーの存在意義は。 「実態が分からないから、これはなんだろうと、いろいろな仮説を提示し、決して断定しない。宇宙人の正体も金星人であったり、地底人であったりする。すべては切り口と見せ方。現実と虚構の間にある世界について、読者に楽しみながら考えてもらう。それが『知的エンターテインメント雑誌』としての役目だ」