カスハラ防止条例が続々成立!三重県桑名市は加害者氏名を公表 暴言、暴力、土下座、監禁…2025年は撲滅の年に
悪質なカスタマーハラスメントがあれば、行為者の氏名を公表するというカスハラ防止条例が三重県桑名市で成立しました。同趣旨の条例は各地で制定の動きが出ていますが、氏名公表まで踏み込んだ条例は全国で初めてです。業務の妨げになるだけでなく、対応する者のメンタルも傷つけていくカスハラ。対策の最前線はどうなっているのでしょうか。カスハラ条例をめぐる動きをやさしく解説します。 【図】桑名市のカスハラ防止条例のポイント (フロントラインプレス) ■ 氏名公表に踏み込む 桑名市カスタマーハラスメント防止条例案はこの12月25日、桑名市議会で採決され、賛成多数で原案通り可決されました。2025年4月から施行されます。 この条例の最大の特徴は、単に理念を掲げただけではなく、制裁措置を明文化した点にあります。条例では、桑名市内の事業所やそこで働く人々が客から理不尽な言動や要求を受けた場合、弁護士らでつくる専門家委員会が調査に着手。「カスハラがあった」と判断された場合、行為者に警告を発します。 それでも理不尽な行為が止まらなかった場合、その氏名を1カ月程度、市のホームページで公表するというものです。 同姓同名などによる混同を避けるため、氏名公表に際しては住所の一部も公表するなどし、“理不尽客”を特定して広く市民に知らせる方針です。条例制定へ向けた桑名市の検討会や市議会では、氏名公表に慎重意見も出されましたが、最終的には「理不尽な行為は許さないという決意を示すべきだ」という意見が上回りました。 伊藤徳宇市長は条例成立後の記者会見で、「桑名で働いている人をしっかり守りたいという思いで、大きな一歩を踏み出すことができた」と語っています。 桑名市がこうした強い姿勢を示した背景には、カスハラ被害が年々深刻化している実態があります。
■ 「自分はヤクザだ」との脅しも 三重県が県内の労働者を対象として2024年5~7月に実施した調査によると、県内の852社・3779人の回答者のうち、32%がカスハラの被害に遭ったと回答しました。業種別では、医療・福祉、運輸・郵便業、卸売・小売業の被害が多く、その割合はいずれも半分近く。カスハラの内容では、「威圧的な言動」が7割超となり、以下、「脅迫・中傷等」「過度なクレーム」と続きました。 深刻な実態を打ち明ける回答も目立ちました。 「出勤日に合わせて来店し、名指しで接待を求められ、手紙を渡されたり、店外で待ち伏せされたりした」 「従業員をすぐ辞めさせろ、殴るぞと怒鳴られ、録音しているからなと脅された」 「店のミスにつけ込み、請求額を半額にしろと高圧的に言われ、応じないと、ネットに掲載すると脅された」 といった声が続出。なかには 「客から『自分はヤクザだ』などと脅された」 「クレーム対応で顧客の自宅を訪問したら、納得してもらえず、数時間監禁状態になった」 という悲痛な訴えもありました。 こうした声は三重県に限らず、全国に広がっていることは想像に難くありません。そのため、カスハラ防止条例をつくる動きは桑名市だけでなく、全国に広がっているのです。