損保大手4社が競合他社の「機密情報」も取得していた疑い、問題は大規模な契約者情報の漏洩だけではなかった
約250万件に及ぶ大規模な契約者情報の漏洩が発覚した損害保険業界で、競合他社の「機密情報」を大手4社が取得し利用していた疑いがあることが新たにわかった。 【写真】損保大手4社に追加の報告徴求命令を出す可能性がある金融庁 機密情報とは火災保険などの商品改定の素案や、補償条件などを定めた引き受け基準の規定集などのこと。 ■不正競争防止法違反に問われる可能性も そうした他社の内部情報を取得し、自社の営業活動や商品戦略に一部利用していたとみられ、不正競争防止法違反に問われる可能性がある。
大手4社とは、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。 複数の関係者によると、各社の営業部門や商品部門などの社員が、競合他社は補償の条件をどのように定め、見直しがあった場合はどう変更しているかや、今後の商品改定の計画や内容はどうなっているかなどを探るために、複数の保険会社と取引している乗り合い代理店などを通じて、内部情報を取得していたという。 そうした情報は、自社が競争優位に立つために利用する場合と、自社だけが突出した基準の設定にならないように利用する場合があったようだ。
ある損保関係者は、内部情報に基づいて他社と足並みをそろえるような行為が、業界の悪しき慣習として長い間にわたって横行しており、「カルテルを助長する行為だとして、公正取引委員会からも指摘されている」と話す。 ■金融庁は追加の報告徴求命令を出すか 情報漏洩問題をめぐっては、金融庁が7月に、大手4社に対して保険業法と個人情報保護法に基づく報告徴求命令を出し、8月末までに調査結果を報告させた。 しかし、契約者情報の漏洩を主眼とする報告徴求だったため、引き受け基準の規定集といった他社の内部情報の取得行為については、各社とも報告書で明確には触れていなかった。組織性や悪質性の度合いが大きい行為のため、金融庁が今後、追加の報告徴求命令を大手4社に出す可能性がある。
さらに足元では生命保険業界でも出向者などを通じた情報漏洩が発覚している。金融庁は生命保険協会を通じて、9月6日までに生保各社による初期調査の結果を報告させる方針だ。その調査結果によっては、生保各社にも保険業法などに基づく報告徴求命令を出す可能性がある。
中村 正毅 :東洋経済 記者