海原純子「母親からは名前を呼ばれず、医師になっても認めてもらえなかった。<娘として愛されたい>求めても叶えられなかった過去が、今でも顔を出す」
海原 母の場合、看護師の仕事は生きるためだし、結婚は医者の妻という地位を得るため。娘を医者にしたのは、良い母親と呼ばれたかったから。本当にやりたいことではなかったわけです。 やりたいことがあればできる環境にあったのに、母にはそれが見つけられなかったし、見つかっても何だかんだ理由をつけてやらなかったと思いますね。 伊藤 私は詩人になるしかなかった人間だけれど(笑)、海原さんにとって医者の仕事は? 海原 本当はジャーナリストや歌手などしたいことがたくさんありましたが、母だけでなく、父にも「女性が一人で食べていける仕事を」と言われて医者を選びました。でも、学費を稼ぐ目的で始めたジャズシンガーの仕事をして、本も出せるようになった。 やりたいことを諦めないのは、母を反面教師にしたおかげかもしれません(笑)。父は理系ですごく頭の良い人で、理解がありました。私のなかで欠けてる部分は母から来ている。 伊藤 どんなところが? 海原 たとえば空間把握能力がないとか。鞄に荷物を詰めるとき1つしか入らないスペースに4つ入れようとしてしまう(笑)。この年になって気づきました。 伊藤 私は美容院に行くと鏡を見て、「うわ、母だ!」ってなる。あとこの年になると、かかる病気が同じなんですよ。頭も顔も父のDNAを継いでいると思っていたけど、体質もどんどん母に似てきてショックです。(笑) (構成=山田真理、撮影=村山玄子(伊藤比呂美さん),大河内 禎(海原純子さん))
伊藤比呂美,海原純子
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