[MOM4920]東海大熊本星翔DF西田羽輝(3年)_攻め切れない試合でも決勝進出、影の立役者は無失点貫いたストッパー
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.9 選手権熊本県予選準決勝 熊本国府高 0-0(PK3-5)東海大熊本星翔高 水前寺] 【写真】「昇天した」「救急車で運ばれちゃう」伊東純也のモデル顔負けショットに大反響…久保建英らも脱帽 東海大熊本星翔高は、求めていたテンポの攻撃ができず、何度も相手の反撃を受ける難しい試合をPK戦で制した。一進一退の激戦で高い緊張が続いていただけに、試合終了後は、選手がスタンドの応援と一緒になって喜びを分かち合っていた。しかし、西岡大志監督は「(決勝進出を果たして)よくやったと言ってあげたいけど、本当にまだまだだよと言いたい」と注目を忘れなかった。 試合内容を見てみれば、流動的な布陣でパスをつなぎながら、敵陣に押し返すことはできていたが、揺さぶりや仕掛けで一工夫足りない場面が続いていたことは否めない。開始6分で大黒柱のMF中村勇心(3年)を欠いた影響もあったが、ポゼッション型のチームにしてみれば、攻撃をやり切れずに反撃を受ける回数が多く、負けゲームになりかねない試合の流れだった。西岡監督は「このテンポじゃない、僕たちがやりたいスタイルは、これではない。もっと早いテンポで(パスを)出して(人が)動く。その中で相手(のマークや予測)をはずす」と攻撃に改善を求めた。 一方で、攻撃主体のチームが攻め切れない、あるいは攻めあぐねた試合で勝利の鍵を握る守備陣には評価を与えた。「西田羽輝(3年)と渡邉尊翔(2年)のセンターバックが、効いていた。西田は、いつも途中で代えるけど、今日は、オレやりますと言っていた」とたくましさを増した背番号4の働きを称えた。 ポゼッション型で、最終ラインを含めて攻撃には人数をかける。その上、相手の熊本国府は速攻型。ボールを失えば、鋭いカウンターが飛んでくる。東海大熊本星翔の最終ラインは、相手のプレッシングに負けずに勇気を持ったビルドアップと、常に大ピンチの危険性をはらむ守備での手堅さの両面が求められる。DF西田羽輝は「とにかく失点ゼロだけ考えた。(自分たちは県1部リーグだけど)熊本国府は、プリンスリーグ九州で常に高いレベルで戦っていて、攻撃力があるし、縦に速い。自分たちが攻撃しているときのリスク管理を徹底した」と話した。 西田のプレーの特長が分かりやすく発揮されるのは、攻撃場面ではある。ビルドアップの位置取りやパスが持ち味だ。身長は171センチで、ストッパーとしては小柄。守備で強さが目立つかと言えば、そうではない。しかし、高校に入学してからはジャンプのトレーニングを続けてきて、ヘディングは武器として認識しているという。相手のターゲットマンと競り合う場面もしばしばあったが、コツコツと積み上げてきたものが生きた。守備の意識の高さ、位置取りでの優位性など、目に見えにくいポイントで相手を抑えた。 決勝戦の相手は、プレミアリーグWESTの首位を走る大津高。強敵だが、西田は「星翔は、5~6年、決勝に行けてなかったので、決勝に行けたのは良いけど、ここで優勝しないと。自分たちは優勝という目標でやってきた。優勝しないと目標を達成できない」と譲る気のない覚悟を示した。相手には、プレミアWEST得点ランク1位のFW山下景司(3年)がおり、準決勝でもハットトリックを達成しているが、西田にとっては、ソレッソ熊本U-12のチームメート。西田は「新人戦のときは、やられた。思い切りマッチアップするので、次こそは抑えたい。アイツに絶対に点を取らせたくない。それで失点ゼロで勝てたらいい」と対抗心を燃やした。 準決勝で8得点を奪った大津を破るには、守備の奮闘が欠かせない。幼馴染との対決に燃える小さなストッパーが、次の試合でも鍵を握るかもしれない。 (取材・文 平野貴也)