臓器横断的ながん薬物療法で“治療難民”を防ぐ―日本臨床腫瘍学会の取り組み
◇治療の格差をなくすために、トレーニング体制の拡充を
がんの薬物療法では、患者さんの命に関わる副作用が現れる場合があります。薬物療法のマネジメントは多様化・高度化しているため、専門のトレーニングを積んだ医師が薬物療法にあたる体制を各病院で築くことが重要です。私は今後、AI技術がいくら進歩しても、腫瘍内科医がAIに取って代わられることはないと考えています。それは、がん薬物療法では患者さんの状態や年齢、家庭環境、希望などを考慮して、それぞれに適した治療方針を立てなければならないからです。そのためには、患者さんの気持ちを察し汲み取る必要があります。たとえば診察時に患者さんが「大丈夫です、分かりました」と言っていても、表情や声色などから、話を聞く必要があると判断する場合もあります。このような対応は、AIには難しいでしょう。 医療機関による治療内容の格差をなくすためにも、医師の教育を引き続き推進していきます。若手の先生にはぜひメディカル・オンコロジーの領域に足を踏み入れてほしいと思います。がん治療の施設選びで迷われている患者さんも、ぜひ腫瘍内科医の育成に力を入れているような病院を検討してみてください。 現状で、全ての医療機関で専門医がさまざまな種類のがん薬物療法に対応することはできなくても、常に理想を念頭に置いて少しずつ現実を近づけていけるよう努めていきます。
メディカルノート