大腸がんと診断された29歳女性 人工肛門の可能性を指摘され、どうなった?…患者の10%は30歳未満
胃と腸の整え方
消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。 【漫画8コマ】末期の大腸がんを患う40歳代男性 最期に語った「人生で一番うれしかった」こと
大腸がん患者が増えていることもあって、「40歳になったら一度は大腸内視鏡検査を受けてください」と訴えています。この年代からポリープの発生が増えてくるからですが、中には30歳前後の方で大腸がんが見つかることもあります。「どうして私が」と驚くのも無理のない話です。そんな方の例を紹介します。
便に血が混ざる頻度が増えて受診
29歳の会社員A子さんは、以前から時々、排便時の痛みや便に血液が付着することがありました。排便はほぼ毎日の習慣で、便が硬い時に肛門に痛みがあり、切れて出血するのだから痔(じ)と考えて市販薬を使っていました。ところが1か月ほど、肛門痛はなく、便が硬いわけではないのに便に少量の血が混ざり、その頻度が増えたと言って、私のクリニックを受診されました。
肛門から3センチの直腸にがん
大腸内視鏡検査をすると、肛門から3センチの直腸に約3センチ大の平らなポリープ。表面の一部を採取して、組織検査に出すと大腸がんと判明しました。A子さんに告げると、「家族や親族にだれも大腸がんの人はいないのにどうして?」と絶句。問題は大腸がんになったことだけではなく、その位置が肛門に近いことでした。 手術でがんを完全に取り除くため、がんの広がり方によっては、肛門をふさいで腹部に開けた穴から排便する人工肛門にせざるを得ないかもしれないのです。A子さんはそれを聞いて「頭が真っ白になった」と振り返っていました。
手術で直腸を切除、幸い肛門は残った
近隣の総合病院の大腸専門の消化器外科を紹介。内視鏡を使って、がん細胞がある病変をそぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)を受けました。ところが切り取った組織を調べると、がん細胞が直腸に残っている可能性が。そこで腹腔(ふくくう)鏡手術を追加して直腸を切除。がん細胞を取り切り、幸い肛門を残すこともできました。A子さんは「早めに治療を受けることができて良かった」とほっとした表情でした。