新NISA「オルカン選べば完璧」と思った人の7割が見落とす「やらねばならなかったこと」。元ファンドマネジャーがそっと指摘#1
極めて完成度の高い、盤石の「オルカン」が潜在的に持つ超絶リスク。実は…
逆に言えば、総経費率が高いファンドには要注意です。投信というと募集手数料や信託報酬など分かりやすいコストには気を払いますが、売買手数料や海外での保管コスト、課税は事後的にしか分からないこともあります。 オルカンのように巨大でしかも単純な運用の場合、多数のファンドで集められた資金を親ファンドでまとめて運用する手法(マザーファンドと呼びます)でコストの低減を図ります。が、新興国に投資する小型のファンドは事後的に経費率が3%に及ぶ、などという場合も散見されます。既に運用されているファンドについては目論見書を、新設の新興国株ファンドは資金の小さなものを避けるなどの工夫が必要です。 もうひとつ、オルカンについては、全体の95%が外国株であることを忘れないでください。そこには株価変動リスクとともに、為替リスクが潜んでいるのです。 株価はおよそ年に上下20%程度変動します。最近は円安が続いていますので為替のリスクに鈍感になりがちですが、為替も上下10%程度は変動するものです。当ファンドは設定来6年程度ですのでトラックレコードが短いですが、株式市場では10年程度に1回の頻度で××ショックと呼ばれる下落局面が発生しています。 日本人が海外から資金を回収する(リパトリ、と呼ばれます)ことで円高が同時に発生、ダブルパンチで外国株ファンドの下落率が50%になることもあることを忘れないでください。 数年前に「レバナス」という単語が流行しました。覚えてらっしゃる方もいると思いますが、これは「レバレッジをかけたNASDAQ連動ファンド」のことで、ファンドが借り入れを行いながら先物に投資することで、NASDAQの2~4倍の値動きを目標にするファンドでした。 NASDAQとはハイテクや情報関連の比率が高い米国の株価指数です。過去の変動を見てみると、ITバブル崩壊時(2000年)、リーマンショック時(2008年)、そして記憶に新しいところでは昨年までの米国の利上げ局面で、それぞれ40-60%の下落局面を経験しました。その倍以上の値動き、更に円高が同時に起きた場合の資産減少に耐えられるでしょうか。 当時の流行を追ってレバナス一択で運用していたらどんな結果になったかを思うと、一択、という言葉には危険が隠れていると言わざるを得ません。 今回は「オルカン一択」に潜む危機の例をお話しました。次回は「資産運用の公式」「家計の損益計算書とバランスシート」についてお話します。それでは皆さん、ドキドキしない運用を祈念しています。
投資家・文筆家 澤田信之