新NISA「オルカン選べば完璧」と思った人の7割が見落とす「やらねばならなかったこと」。元ファンドマネジャーがそっと指摘#1
まずは踏まえておきたい「資産運用の5ステップ」
さて、資産運用には5つのステップがあることをご存知ですか? その結果として「オルカン一択」になる方もいるかもしれませんが、そう大勢ではないとも思います。もう一度整理のつもりでご覧ください。 1・資産運用の公式 家計の損益計算書とバランスシート 2・ライフプランとキャッシュフロー表 3・アセットアロケーション 4・コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ 5・実践(元機関投資家の資産運用) 投資先を決めるにはこの5つのステップが意識的にせよ無意識にせよなされています。「オルカン一択」は実はこのステップ5に含まれる内容です。 タイパを優先して1⁻4を知らずに「オルカン一択」にしている場合、思わぬリスクに足を取られる可能性があります。
そもそも「オルカン」ってなに? 改めてその存在を解説すると
新NISAのスタートに合わせて、本屋さんの店頭からyoutubeまで、あらゆる場所に資産運用関連の情報が溢れました。「オルカン一択」もよく見るフレーズで、「とりあえずそれだけやっておけばよい」というタイパ重視の方に人気があるようです。「あれこれ比較する時間そのものを節約する」という意味のタイパです。 実のところ、それが正解の方もいらっしゃいます。たぶん、全体の3割くらいでしょうか。いっぽう、過度にリスクを取っている方も多いと思いますので、まずは「オルカンとはなにか」を説明したいと思います。 「オルカン」とはオールカントリーの略で、世界各国に上場する株式の中から流動性の高い銘柄を選んで投資する「世界株式ファンド」のことです。類似のファンドはたくさんありますが、どのファンドも運用はほぼ同じで、一部を除いて運用成績にも差異はほとんどありません。 ファンドの中身を覗いてみましょう。資産残高が4兆円に近い代表ファンドの e-maxis slim全世界株式(オール・カントリー)の月報や目論見書から代表的な数字を抜粋します(国別比率は2024年5月月報、銘柄数は2024年1月交付目論見書より)。 このファンドの国別配分比率を見ると、先進国が約9割、新興国が約1割になっています。先進国の内訳は、米国60%強、日本5%強、欧州などその他が25%弱、新興国は中国3%強、インド、台湾が1%台で続きます。つまり、全世界といっても、米国が6割あるのに対して、日本は新興国を下回るわずか5%ということになります。 株式投資は経済成長率の高い国に投資するのが国別配分の基本ですので、期待成長率が低い日本の比率が低いことには問題はありません。海外市場に比べてリターンが低いだろう日本の比率は今後も下がっていくと考えられるからです。 個別銘柄の保有リストを見ても、米国株中心であることが分かります。アップル、マイクロソフト、エヌビディアが4%弱、アマゾン、メタ、アルファベットがそれに続いており、米国の主要ハイテク銘柄が上位にランクインしています。保有銘柄数は全部で3,000弱、米国中心とはいえ非常に分散化されたポートフォリオで、個人でこれを真似することは伝説の投資家、ウォーレン・バフェットでも困難でしょう。 ファンドの運用には経費がかかります。運用会社、信託銀行、取引手数料など様々ですが、一般に1%以上の費用が掛かるのが常識の世界です。が、このファンドは規模の利益を追求することで総経費率が0.13%と低くなっています。 世界規模で分散化されたポートフォリオが、非常に低いコストで保有できる、特に新NISAのように長期で保有する可能性が高い場合はコストが低いことが重要ですので、一択で他を検討せずに済むタイパ、経費のコスパ、どちらをとっても人気が出るのもうなずけます。