【不育症は遺伝するの?】家族が不育症と診断された場合の検査や遺伝性を産科医が解説
赤ちゃんを無事出産するために不育症の治療法とは?甲状腺ホルモン・糖尿病など検査結果によっても治療が変わってくる?
編集部: 不育症は治療することができるのでしょうか? 松見先生: はい、不育症に関する研究が進み、現在はいくつかの治療法が確立されています。たとえば「低用量アスピリン療法」という治療法があります。 これは、不育症の原因のひとつである血液凝固異常に対する治療法で、過剰な凝固機能を抑制することで血管の微小な血栓を防ぎます。 そのほかには、子宮形態異常の代表である双角子宮や中隔子宮などの先天性の子宮形態異常(子宮奇形)については外科的治療、つまり手術を行います。 編集部: ほかにはどのような治療法があるのですか? 松見先生: 低用量アスピリン療法、および低用量アスピリン・ヘパリン併用療法、さらには難治性不妊症・着床障害に対する新たな治療戦略としてPRP療法や、免疫異常による不育症に対するイントラリピッド療法などがあります。 「PRP療法」は患者さんの血液を利用した再生医療で、主に血液中の生きた細胞に含まれる良い蛋白質の作用により病的な炎症を抑制します。 「イントラリピッド療法」は現在注目され始めている全く新しい治療で、脂肪乳剤を点滴して免疫の異常による流産を治療します。現在、当院を含め日本の一部クリニック・大学にて精力的に行っております。 編集部: 原因によって治療法は異なるのですか? 松見先生: はい、たとえば内分泌異常が不育症の原因である場合には、それらの治療が優先になります。 甲状腺機能の異常が不育症の原因となっている場合には、甲状腺ホルモンを内服して甲状腺機能を正常化してから、また糖尿病の場合には血糖値を十分にコントロールしてから妊娠することが望ましいとされています。 凝固異常の場合には先に述べたように、アスピリンやヘパリンを用いて血液が凝固しやすい状態を治します。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 松見先生: 不育症で悩む方も多くいらっしゃる一方、体外受精を何度も挑戦しては化学流産を繰り返すということで悩んでいる方も多くいらっしゃいます。流産や化学流産を繰り返してしまう人は、着床前検査を受けることを検討するのもよいでしょう。 この検査を受けることで染色体や構造の異常がなく、流産や死産の可能性が低い受精卵を選択して子宮に移植することが可能になります。一方、遺伝的に全く問題ない受精卵を移植してもやはり流産あるいは化学流産を繰り返してしまう方が一定数いらっしゃいます。 このような方は受精卵に対しての免疫系が活性し、拒絶反応が強くなっていることもあるため、免疫異常のチェックもしておくことをお勧めします。いずれにしても、困っていることがあれば経験と知識が豊富な医師にご相談ください。 不育症はまだまだ分からないことが多い医療分野です。医療機関を選択するときは、どのような治療実績があるかをよく調べて受診することが大切です。