【不育症は遺伝するの?】家族が不育症と診断された場合の検査や遺伝性を産科医が解説
不育症になりやすい体質は子どもに遺伝する?家族・両親が不育症と診断されたら知りたいこと
編集部: 「不育症は遺伝する」と聞いたことがあります。本当ですか? 松見先生: 不育症に限らず、多くの病気は遺伝子の異常に基づくと考えられ、少なからず遺伝します。少し専門的な話をすると、微細な染色体の構造異常などは、そのまま子どもに遺伝することがあります。なので、不育症にあてはめると「不育症は遺伝する」と言えてしまいます。 このように一般的な身体の性質や病気になりやすい性質は親から子に遺伝するため、「家族歴」を確認するのが問診の基本になります。また、喫煙や飲酒などの影響で後天的にがんや生活習慣病などの疾患を発症することもあります。 後天的ではありますが、これらも染色体にある遺伝子を構成するDNAの化学構造を後天的に修飾し、遺伝子の情報の変化に起因します。 不育症が遺伝するということに話を戻すと、原因のひとつである血液を凝固させるために必要な酵素の異常などは家族性に発症することがあります。また、染色体の構造異常が特に母親にある場合、稀に子どもへ遺伝することもあります。 編集部: もし自分の家族や両親が不育症と診断された場合、自分も妊娠を望むとしたら、どうすれば良いでしょうか? 松見先生: ご自分の姉妹や両親が不育症であった場合には、不育症のスクリーニング検査を積極的に受けるのも良いかもしれません。 今回は不育症と遺伝についてというのが話のテーマのようですので、染色体の微細な構造異常に起因する流産という点では、受精卵の遺伝子の異常を調べる着床前遺伝学的検査(PGT-A・PGT-SR)を体外受精をする場合には受けることを検討するといいでしょう。 編集部: それはどのような検査ですか? 松見先生: 体外で受精した受精卵、つまり胚の一部の細胞を採取して、受精卵の染色体の数を調べる検査です。移植の前(着床前)に行うため、このように呼ばれています。 編集部: どのようなことがわかるのですか? 松見先生: 染色体異常には染色体の数の異常と構造の異常があります。PGT-Aは胚、つまり受精卵の染色体の数的異常を確認する検査。PGT-SRは胚の染色体の構造異常を確認する検査です。 これらの検査により染色体の異常による不育症を回避することができ、妊娠率・出産率の向上や流産率の低下が期待されます。