韓国 時代とともに変わるデモ…「ペンライトにK-POP」若者に根付いた“民主主義”
■“ポップデモ”で若者が政治に参加
午前4時半。尹大統領は非常戒厳を解除。6時間の戒厳令に、野党は翌4日、尹大統領に対する弾劾訴追案を国会に提出。しかし7日、与党議員のほとんどが採決を棄権、廃案となった。ここで国民の怒りが爆発した。 その日、国会前では弾劾案の可決を求める集会が開かれていた。15万人の国民(警察推計)が集まったが、目立ったのは若者の姿だ。「弾劾しろ」「民主主義を守れ」などと書かれた紙のほか、多くが「ペンライト」を持っていた。 韓国では2016年にも大規模なデモが起きた。当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免を求めたもので、その時の参加者が手にしていたのは、火のついた「ろうそく」だった。1987年に起きた民主化闘争の際に飛び交っていた「火炎瓶」から「ろうそく」に持ち替え、平和的に民主化を求めたのが始まりだという。 それが今は、会場に人気のK-POPが流れ、軽快な音楽のリズムに乗り色鮮やかな「ペンライト」が揺れる。さながら音楽ライブの会場だ。これが、政治への関心が薄れていた若者たちを引きつけるきっかけの1つになった。 デモがポップになったからといって訴えていることは今も昔も変わらない。 「“民主主義”のために…」
■「参加しやすいように」…高まる街の一体感
7日の弾劾訴追案は、与党議員の大半が投票せず、廃案になった。ここから街の雰囲気が明らかに変わり、若者たちがさらにデモに参加しやすい環境が作られた。 14日に行われた2回目の弾劾訴追案の採決。歩道にいくつものテントが並び、そこでは飲み物や軽食が無料で配られていた。 耳当てやカイロなどを配る集団がいた。地元企業の従業員だという。社長は非常戒厳のニュースを見て「将来の世代に顔向けできない」と思い、日本円で約40万円分を自費でまかない、無償での提供を決めたという。 「20代から30代などの若い人に少しでも役立つものを準備した」 国会周辺に集まったのは24万人(警察推計)。若者の数は格段に増え、氷点下に迫る中、皆が巨大なモニター越しに採決の行方を見守り、声を上げた。見渡す限り揺れるペンライトは幻想的ですらあった。