民進代表選、枝野幸男氏が出馬表明会見(全文1)遠からず政権を奪い返す決意
民進党の枝野幸男元官房長官は8日午後から記者会見し、9月1日に行われる代表選への立候補を表明した。 同代表選には7日に前原誠司元外相が正式に出馬表明している。
立候補の決意の理由に、日本が抱える4つの危機
枝野:よろしいですか。報道の皆さんには本日、お忙しい中、お集まりをいただきましてありがとうございます。またインターネットなどを通じてご覧をいただいている皆さんにも感謝を申し上げます。私、枝野幸男、今般実施されることになりました、民進党代表選挙に立候補させていただくことを決意をいたしましたので、正式にご報告をさせていただきます。 私が今回、立候補を決意いたしましたのは、今の日本が抱える大きな危機、4つの危機、それは私が国会に送っていただいて24年、私自身が大切に思い、取り組んできた課題に関して大変な危機を迎えている。その思いが出発点であります。24年、国会で仕事をさせていただきましたが、やはりなんといってもその中で一番大きな出来事は東日本大震災と原発事故でありました。多くの皆さんが命を失い、家族、友人、仲間を失い、ふるさとを失い、コミュニティーを失われました。あの災害に、そして事故に官房長官として対応に当たらせていただいた。被害に遭われた皆さんにとっては至らなかった点、足りなかった点、多々あろうと思います。私ももっとできることがなかったか、常にそう自分に問い掛けています。 自民党政権になって復興が加速すると期待をされていました。確かにハード面での復興は進んでいます。しかし心に大きな傷を負われた被災者、被害者の皆さん。その暮らし、そしてその心に、気持ちに本当に今、寄り添った被災地の支援がなされているのか。復興がなされているのか。歯がゆい思いで野党という立場からできることをやらせていただいています。ハードばかりに力が注がれて、1人1人の国民の皆さんに寄り添うことができていない。それはこの大震災、原発事故の被災地、被災者との皆さんとの関係が最も顕著に表れていると思いますが、そこにとどまるものではないと思っています。 あの大震災のとき、絆という言葉が多く言われました。被害に遭われた人同士が、そしてそれを支える、応援をする全国の人たちが絆で結ばれました。しかしそれから自民党政権になり、この4年半、国民の間の絆は深まったのでしょうか。残念ながら社会の分断がますます進んでしまっている。あの災害のときにつながった絆はどこへいってしまったのか。そこには残念ながら自分と違う意見を敵視し、国民を敵と味方に二分をする今の政治の姿勢というものが背景にあるのではないか。もう一度、社会を包摂し、寄り添う政治を取り戻していかなければならない。そして被災者、被害者の皆さんに寄り添うその姿勢を第1に掲げて、復興に当たっていかなければならない。強く感じています。 2つ目は、今の問題ともつながりますが、多様性が失われつつあると思っています。24年前、私が始めて衆議院選挙に立候補をしましたとき、具体的な公約を3つ掲げました。選挙制度、政治改革の嵐のときでした。そして製造物責任法、PL法。もう1つの公約は24年たっても実現できていません。選択的夫婦別姓の実現です。私自身はその後、結婚をして、妻は枝野を名乗っています。でもそうではない生き方をしたい、そうではない選択をしたい、そうした人のためにその道をしっかりとつくっていく。自分と違う意見を尊重し、自分と違う考え方の人たちも同じように生きやすい社会をつくっていく。私の政治に足を踏み入れようとした原点であります。しかし特にこの4~5年、違う意見を排斥する、自分と異なるものを排斥するヘイトスピーチの横行などに見られるように、そんな社会現象と、それを許容する、そう思われても仕方がない政治が続いていると思っています。 3つ目の危機は情報公開。国会に送っていただいて1期目、薬害エイズ問題という、大きな過大に取り組むことになりました。厚生省の地下に隠されていたファイル、この情報公開をさせることの困難さ、そのファイルを見つけ出すことができ、そのことによって薬害エイズの被害者の皆さんが、救済される。過去の行政の過ちがしっかりと検証される。情報公開の重要性というものをあのとき、実感をいたしました。その後、情報公開後の制定、あるいはその改正。情報公開の前提となる公文書管理法の制定。常に党の担当者、責任者という立場で、最前線でこの問題に取り組んできました。 しかし昨今の状況はどうでしょうか。特定秘密保護法が強行をされました。PKOの日報問題や森友・加計問題はさまざまな問題点を含んでいますが、私は公文書管理法、情報公開法、どう見ても違法なことを堂々と行政が行っている。公文書管理法に関して、公文書が捨てられる、公文書ではないと言い募る。そして情報公開法に反して情報が隠される。こんなことを認めてしまう、容認してしまう。そんなことになったらこの国の政治は、民主主義は、少なくみても20年以上後退をしてしまうことになってしまう。私はそれを許すことができません。 最後に立憲主義と法の支配に対する危機であります。私は2年しか実務をやっておりませんが、曲がりなりにも法律家の端くれであります。近代社会というのは法の支配と立憲主義が前提です。法の支配なき近代国家はあり得ません。立憲主義なき近代国家はあり得ません。しかし残念ながら法の支配が、立憲主義がないがしろにされています。立憲主義や法の支配が貫徹されない社会は前近代社会。それこそ100年も200年も、この国は時代が逆戻りしてしまったのではないかという危機感を持っています。 私自身が取り組んで、私自身が大事だと思ってきたテーマで、こうした本当に大きな危機を迎えている中、なんとかこの危機を克服しなければならない。政治の流れを反転させなければならない。社会の当たり前を当たり前にしなければならない、強い思いを抱いてきました。そのためには自民党の暴走を止め、もう一度、政権を預からせていただく。そのことがどうしても必要だと感じてまいりました。 しかし同時にこうした危機を克服すべき、政権の担い手となるべき民進党も大きな危機に直面をしています。民進党をしっかりと立ち直らせなければ、この危機を乗り越えることができない。この危機を乗り越えるために民進党を立ち直らせなければいけない。そのためにこれまで24年、地元の皆さまにお支えをいただき、重ねてきた経験を、勇気を持って先頭に立って生かしていかなければならない。そうした決意に至ったものであります。 自民党に変わりうる政権の担い手たるのは民進党以外にはあり得ない、確信をしています。いっときの風を吹かせ、ブームを起こすのであればさまざまな可能性があるでしょう。しかし政権の担い手たりうるには全国津々浦々の、幅広い国民の暮らしに寄り添う地域の基盤が不可欠です。風頼みの存在では風を吹かせ続けるためにポピュリズムに走ることになります。風に左右され、持続可能性を持って安定的に政治に取り組むことができません。