民進代表選、枝野幸男氏が出馬表明会見(全文1)遠からず政権を奪い返す決意
多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う日本を目指す
私はスローガン的に言えば、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う。そんな日本を目指します。この旗を明確に、そして高く掲げて、政権を目指します。認め合い、寄り添い、支え合う社会のために自民党と違う政策は多岐にわたりますが、今日は明確な違いを示し、党員サポーターそして国民の皆さんの関心が高いと思われる3点についてお話をさせていただきたいと思います。 1つは経済と暮らしに関わる政治の役割です。自民党政権は自己責任を強調して、自由競争を過度にあおる政治を進めてきました。結果的に社会の格差が拡大し、そのことで消費が停滞しています。自分さえ良ければ良いという、エゴイズムがはびこり、社会全体がささくれ立ってきています。しかも安倍総理はお友達政治と揶揄され、あるいは都議会議員選挙の最終演説で有権者に向かって、こんな人たち、と指さしたことに象徴されるように国民を敵と味方に二分し、対立をあおる政治を進めてきました。 自己責任を強調することは政治の責任放棄です。国民を敵と味方に二分するのは全ての国民のために働くべき、国家のリーダーとしての役割と責任を見失った姿です。誰もが人生を通じて、自己責任だけで生きていけることはありません。今は自立でき、不自由を感じていない人でも事故に遭ったり、病気になったりするかもしれません。何よりも年を重ねれば、誰でも病気になりがちであり、介護が必要になることも多くなります。若くて健康でも子育てや教育に関する不安に応えるには、社会的な支えが必要です。そんな困ったとき、必要のあるときにお互いさまの精神で支え合う仕組みを整えること、それこそが政治の役割です。自己責任で社会が回っていくなら政治は要らないんです。 今こそ、特に小泉改革以降の自民党政権が壊してきたお互いさまに支え合う仕組みを政治の力で取り戻しましょう。医療や介護を充実させること、どんな家庭でも子供たちの可能性が等しく保障されるよう、子育てや教育を支援すること、失業や貧困にあえぐ人、あるいは障害や難病に苦しむ人を下支えして押し上げること。そして自由競争だけをあおり、なんでも規制緩和すれば良くなるという幻想から抜け出しましょう。労働法制は緩和が必要なのではありません。非正規雇用を減らし、希望すれば正社員になれる道を広げましょう。過労死を招く長時間労働を厳しく規制しましょう。 こうした支え合いの仕組みづくりは、中長期的な効果を生むだけではありません。最も緊急に多くの国民の皆さんが期待している経済の立ち直りのためにも、お互いさまの支え合いの仕組みを再構築することこそが最大の対策です。バブル崩壊以降、日本経済が低迷している本質は消費不況であります。国内での消費が冷え込み続けていることが経済全体の足を引っ張っているんです。その背景には非正規雇用が増え、格差が拡大し、中流といわれる所得層がやせ細り、貧困が拡大しているからにほかなりません。消費したくてもできない人を増やして、景気が良くなるはずがありません。 低賃金であるために人手不足が常態化している、例えば介護職員や保育士、看護師などの賃金を底上げして、可処分所得を押し上げ、そしてそうした分野の雇用を増やしましょう。賃金は市場原理と労使交渉で決まるのが原則ですが、今、申し上げたような分野は介護保険制度や診療報酬など政治の力で影響を与えることができる分野です。どちらかというと低所得の方が多い分野であります。こうした分野の賃金の底上げをすること、そして全体としての雇用を増やすこと。そのことによって今度は市場原理が働いて、低賃金労働者から順次、賃金が上がっていく循環に載せることができ、消費の拡大につながります。これこそが株価引き上げに象徴される自民党の経済対策と異なる、民進党の経済対策、景気対策であります。 第2の自民党との違いは、原子力政策です。先ほどのとおり、私は官房長官として、東日本大震災による原発事故の対応に当たり、絶対に事故が起きないというのは幻想であること、一度事故が起きると対応が著しく困難であること、そして取り返しのつかない被害をもたらすことを痛切に感じています。そしてその後、経済産業大臣として原発ゼロに向けた方針を作る先頭に立たせていただきました。ところが自民党政権となり、政府は原発をなくしていくのとは逆方向に進んでいます。1日でも早く原発ゼロを実現するため、最大限の努力をするのはあの事故に官房長官として対応し、その後の方針を経済産業大臣として作り上げた私にとって、ぶれることの許されない基本であります。 幸い、民進党のエネルギー環境調査会では、蓮舫代表の肝いりで1日も早く脱原発を実現するための原発ゼロ法案を作る作業が進んでいます。この作業を引き継ぎ、年内にも脱原発をさらに前倒しすべく原発ゼロ法案を取りまとめ、国会に提出することを目指します。下野して4年半、技術革新が著しく進んでいます。再生可能エネルギーの導入も政権当時に想定した以上です。電力自由化の着実な進展を含め、原発を取り巻く環境や前提は大きく変わっています。 民進党は、結党の際の基本的政策合意で、責任ある避難計画の策定などを再稼働の前提を付していますが、こうした前提は今、満たされていません。このような状況で私は原発の再稼働を認めることはできないと思っています。 3番目は憲法9条と安全保障問題です。党は綱領で自由と民主主義に立脚した立憲主義を断固として守るとしています。安全保障における現実主義を貫く、その前提として専守防衛を掲げています。従って、立憲主義を破壊し、専守防衛を逸脱した集団的自衛権の一部行使容認は、到底認めることはできません。これを前提とした9条の改訂は党綱領に反するものとして徹底的に戦います。 もちろん私たちは自由と民主主義、国民の人権と暮らしを守るために必要な改訂があるならば、しっかりと取り組む立場です。私は憲法調査会長として本当により良くなる、そして必要な改訂がありうるのか。知る権利、解散権の制約、地方自治という3項目をはじめとして広範な分野で検討を主導してきました。この検討は今後も着実に進めてまいります。 立候補の正式な表明に当たって特に顕著な点を3点挙げましたが、このほかにも先ほど申し上げた情報公開や公文書管理の在り方、共謀罪や特定秘密保護法、女性や障害者、そして性的マイノリティーの人権など、党のアイデンティティーに関わる課題はたくさんあります。こうした点でめりはりを付けて、自民党との違いを明確に示してまいります。