1期目に”防波堤”となった外交エリート陣は起用しない?トランプ外交政策が「やりたい放題になる」根拠
ドナルド・トランプ前大統領がアメリカで政権を奪還し、恐怖と変化を求める反権力の波に乗っている。アメリカ人にとっては、南北戦争以来の民主主義と憲法秩序が試される瞬間である。 しかし、世界の他の国々にとっては、それに劣らずトラウマ的な瞬間である。アメリカは今、戦後の自由主義秩序の主導権から後退する態勢にある。トランプ大統領の復帰はアジア、そして日本、韓国、太平洋地域の同盟国にとって何を意味するのだろうか。
■アジアにおける外交政策は変わらない? 日本と韓国の指導者たちは、トランプ大統領のアドバイザーになるであろうアメリカの安全保障専門家たちの”なだめるような言葉”に安心するかもしれない。トランプ大統領のもとではインド太平洋地域は何も変わらない、と専門家たちは忠告する。 「この地域におけるアメリカの外交政策は変わらない可能性が高い」と、ランド研究所上級防衛アナリストのデレク・グロスマンは、投票直前に『ディプロマット』紙に寄稿した。トランプは「より取引的で予測不可能な指導者」かもしれないが、この地域の同盟関係はそのまま残した。何が起ころうとも、「『中国要因』はアメリカの同盟ネットワークの継続的な発展を促進するだろう」。
だが、こうした見解は、1期目の終わりにトランプが同盟のコミットメントの多くを放棄するつもりであったという、豊富な証拠ーー主にトランプ自身の言葉ーーを無視している。 マーク・エスパー元国防長官とジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)が回顧録に記したように、トランプは韓国からアメリカ軍を撤退させ、北朝鮮の金正恩総書記との未完の交渉を完了させ、北朝鮮の核戦力をそのままにし、アメリカの防衛の役割を担うことを理由に、日本に多額の支払いを要求するつもりだった。
また、中国だけでなくヨーロッパやアジアの同盟国も対象として、外国製品に全面的に大規模な関税を課すというトランプの度重なる意向もすっ飛ばしている。 ■ロシアのウクライナ侵攻でシナリオは変わった さらに重要なことは、アジアにおける外交政策が、他の地域、特にヨーロッパや中東で起こっていることと区別され、切り離されたものでありうるという考えは幻想であるということだ。 日本自身の国家安全保障戦略が明らかにしたように、ロシアのウクライナ侵攻は東アジアの安全保障状況を根本的に変えてしまった。ロシア、中国、北朝鮮の緊密な軍事同盟を生み出し、朝鮮半島、台湾、そして東アジア全体の安定を脅かしている。