“医師の裁量権”の名のまま野放し状態…「がん免疫療法」うたう自由診療に潜む本当の怖さ 日本人は「あやしい医療」の実態を知らなすぎる
■がんの自由診療がはびこる原因 本来であれば、未知の治療は厳密な臨床試験が行われるべきである。 だが、このような自由診療が“医師の裁量権”の名のまま野放し状態になり、ほとんど規制されていない。これが非倫理的、非科学的な自由診療がはびこった背景にある。 患者は藁にもすがる思いで治療を受けるため、“お金はいくらかかっても可能性があるなら“といくらでもお金を出す。筆者の患者にも、このような自由診療に1000万円以上費やした人がいる。
患者側の弱みにつけ込んで高額の医療費を自由に設定でき、利益率が高いことから、美容系のクリニックががん自由診療経営に乗り出しているケースもある。 患者側として、あやしい自由診療にだまされないポイントとしては、以下の3つに気を付ける必要がある。 1 健康保険が使えない自由診療 2 「がんが消えた」「治った」などのうたい文句 3 体験談が載せられている ■「あやしい自由診療」見極めのポイント 日本は世界的にも優れた国民皆保険の国であり、有効な治療はすでに保険適応になっている。現在承認されていない薬でも、有効性が本当に期待される治療であれば、治験などががんセンターなどで必ず行われ、治療薬として承認される。
医療法の「医療広告ガイドライン」でも、有効性をうたえるのは承認された治療法だけである。わかりやすく、断定的に、「がんが治った、消えた」などとうたっているのは、あやしいと疑ったほうがいい。 また、体験談はわかりやすいが、医学的エビデンスとしては最も信頼性の乏しい情報であるため、医療広告ガイドラインでも体験談を載せるのは禁止している。効果があった症例などを載せているホームページなどがあったら、あやしいと疑うべきだ。
がん治療に関してあやしげな自由診療をやっているのは、ほとんどががんの専門医がいないクリニックであり、もともと美容外科が専門であるとか、救急医療専門であるとかの医師がやっているなどということもある。 上記に気を付けることに加えて、クリニックにがん治療の専門医がいるかどうかも、ホームページなどで確かめてほしい。
勝俣 範之 :日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授、部長、外来化学療法室室長