お金のない日本人を「4時間8000円」で行列に並ばせる…日本で暗躍する"中国人転売ヤー"の知られざる実態
■どうすれば転売ヤーはいなくなるのか ――今後の日本でもし転売ヤーが衰退することがあるとしたら、どんなキッカケが考えられるでしょうか。 やっぱり日本の転売市場の裏には中国の影が存在しています。中国人の間で、「転売屋から商品を買うのってファンとしてどうなの?」と疑問視する風潮が生まれれば、急速に転売ヤーの需要が減っていくと思うんです。これだけ聞くと夢物語みたいに思えるかもしれませんが、実は15年ほど前には「偽物」を巡って同じことが起きているんです。 一時期、中国では「偽物」の商品が横行したことがありました。当時の中国人は、「偽物でもなんでも構わない」といった国民性だったんですが、次第に偽物の商品を持つことに恥ずかしさを覚えるようになり、偽物の商品が市場からだんだん消えていきました。そのときと同じように「転売ヤーからではなく正規ルートで買った商品じゃないと価値がない」という価値観が生まれる可能性はあると思うんです。 ■転売ヤーにただ怒るだけでは何も解決しない ――では、日本人のほうは転売ヤーに対してどんなスタンスでいるのが望ましいと考えますか。 実際に自分の欲しい商品が転売ヤーによって買えなくなってしまったファンが怒るのはわかるのですが、日本の場合、まったく関係のない人まで転売ヤーを目の敵にしている印象があります。たぶん日本人は「労せずに儲ける」ことに嫌悪感を抱きやすいのかと。転売ヤーは右から左に商品を流すだけで儲けているイメージがあるので、腹が立つのかもしれません。 日本にはかつて「一億総中流社会」と呼ばれた時期がありましたが、今はもはや「格差社会」になっています。転売市場は金を持っている人間が財力で他人から商品をぶん取る……という図式なので、そこに格差社会の側面を見いだしてしまい、アレルギー反応を起こしているのだと思います。でも、転売ヤーも労せずに儲けているわけではない。 ただ、「転売ヤーだって苦労しているんだから理解してあげようよ」と言うつもりはありません。おそらく日本人の多くは、転売ヤーという人たちの実態がわからないまま怒っているんだと思うんです。彼らの実像が見えないままやみくもに怒っているだけでは、いつになっても問題は解決しないのではないでしょうか。 ---------- 奥窪 優木(おくくぼ・ゆうき) フリーライター 1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。ツイッターアカウントは@coronasagi ---------- ---------- 國友 公司(くにとも・こうじ) ルポライター 1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。キナ臭いアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やし7年間かけて大学を卒業。編集者を志すも就職活動をわずか3社で放り投げ、そのままフリーライターに。元ヤクザ、覚せい剤中毒者、殺人犯、生活保護受給者など、訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が、2018年の単行本刊行以来、文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーとなっている。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。 ----------
フリーライター 奥窪 優木、ルポライター 國友 公司