お金のない日本人を「4時間8000円」で行列に並ばせる…日本で暗躍する"中国人転売ヤー"の知られざる実態
■毎月黒字を叩き出せるわけではない ――では、搾取され続ける末端の人たちの上に位置する転売ヤーたちはウハウハなのでしょうか。 そういうわけでもないんです。転売ヤーに常につきまとうのが「在庫リスク」です。もともと末端の人間として「買い子」や「並び屋」をやっていたものの、自分一人で転売をするようになったSくんという大学生がいます。彼はキャンプブームにあやかってキャンプ用品をよく転売していたんですが、ブームは一過性のものですぐに落ち着いてしまいました。 また、焚き火グッズは冬によく売れるなどキャンプ用品は季節に左右される商品が多く、売り時を逃してしまうと大量の在庫を抱えることになります。だから、在庫処分という形で安く売らざるをえないときも多くあり、赤字を出してしまう月もあったと聞きました。 ■利益をすべて失う転売ヤーも ――仕入れる量が多ければ多いほど利益も出しやすくなりますが、逆に在庫を抱えてしまったときの損失は大きそうですね。 「越境転売ヤー」と呼ばれる人たちの例はもっと悲惨です。彼らは日本で大量に仕入れた商品をEMS(国際スピード郵便)などで中国本土に送るのですが、中国側の税関の方針がコロコロ変わるんですよ。何の前触れもなくいきなり課税が強化されたり、本来EMSでは送れない商品を何かに紛れ込ませて密輸できていたものが、いきなりできなくなったりする。 そして、中国の税関に商品が引っかかると、何の連絡もなくただ届かない。日本にいる転売ヤーからしたら、顧客から「商品が届かない」と連絡が来て初めて、税関で引っかかったことを知るわけです。税関に問い合わせると、「処分しました」とだけ伝えられるので、仕入れた商品はすべてパーになるうえに、顧客からの信頼まで失ってしまうのでかなりの痛手です。取引が「BtoB」(企業間取引)だった場合、必然的に大量発注になるので、さらに被害額は跳ね上がることになります。