ブライトン・ライダーS510インプレッション 高機能サイコンの生き残る道|Bryton
クライムチャレンジ評
ライダーS510の売りの一つであるクライムチャレンジ、他社のサイコンでも同様の機能があるが、これはなかなか楽しい。基本的には「上りで適切なペース配分を可能にするための機能」であり、最初は「余計なお世話」だとも思っていたが、登坂をめいっぱい堪能するためにも有効だと気付いた。突っ込みすぎると後半へろへろになって楽しめないし、前半抑えすぎると力を出し切れずにこれまた楽しめない。クライムチャレンジのような機能があると、そのときどきに最適なペースで上りを満喫できるようになる。 コース設定していないフリーライド中のクライムチャレンジの振る舞いだが、基本的には「こっちに行くであろう」とメーター側が予想したルート上にある登坂を予測表示する。坂の直前で曲がった場合は、多少迷ったあと、「そっち行くのね」と新たなルートの上りを表示する。また、上りの途中で脇道にそれると「上らへんのかいな」とクライム終了となる。なかなか賢い。 クライムチャレンジは起動条件を「全ての上り」か「中級以上の上り」か「起動させない」から選択できるのだが、厳密にいえば、上りが開始する地点とクライムチャレンジが起動する地点にややずれがあったり、表示される斜度と実際の斜度に差があったり、「ここまで上りセクションに含めるの? 」というような設定もあったりする。この点に関しては他社のサイコンも同じようなもので、おそらく地図データ起因のものだろう。ただ、実際のコースと大きくずれることはなくライドの目安には十分なる。
スマホとは別の道を
ライダーS510、数週間ほど使わせてもらったが、価格が倍近い他社ハイエンド機に比べて明確に劣ると感じられるところはほぼなかった。動作もフリーズすることなく安定している。 代理店の担当者に「ブライトンならではのアドバンテージは? 」と問うたところ、「ブライトンの強みはとにかくコスパ。ライバル他社のハイエンド機と同じレベルの機能を持った製品が半額近い金額で購入できます。ただし、地図データはOSM(オープンストリートマップ=世界中の有志の作業者が作成・編集している無料の地図データ。地図版Wikipediaとも言われている)を使っており、情報量や精度では他社ハイエンド機に劣ると感じられる部分はあります。また、データを管理・分析するソフト面でもブライトンより優れているメーカーは存在しますね」とのことだった。 ただ、地図のクオリティは実際に使っているとほとんど気にならない。10万円以上もするハイエンド機をフルに使いこなしているような人であれば話は別だが、筆者のようにコース作ってナビ使ってデータを管理してときどきトレーニングにも使って……という用途であれば、これで満足だ。 今回、最新のサイコンを調べて使って感じたことは、サイクルコンピューターにとってこれからの脅威は、王者君臨のガーミンでもなく、同じ価格帯にひしめくライバル他社でもないということだ。スマホである。 ナビ、メーター、各種センサーとのリンク、データ管理のプラットフォームなど、機能としてはスマホで事足りる状況になってきている。ナビ機能に関してはスマホのほうが圧倒的に優秀だ。ライドデータはスマホで解析をするのだから、ライド後にわざわざ同期する必要もなくなる。スマホで完結させられれば、携行物が一つ減ることにもなる。しかもスマホは誰もが所有しているし、画面は大きく動作は早く、スマホホルダーも充実している。車のナビをスマホのgoogleマップで代用する人が増えたように、「自転車用メーターもスマホでいいじゃん」という声はこれからもっと大きくなる。 では、わざわざサイコンを買って使う理由とは? バッテリーの持ち(スマホをサイコンとして使うと数時間しか持たず、バッテリーを使い果たすと通話などもできなくなる)や、重量的ビハインド、高温時や悪路での動作の不安定性、落車で壊したときや落としてしまったときの各種情報の消失のリスク、心的ダメージなどだろう。それらを考慮すると、我々のような一日に数時間も自転車に乗り続けるような特異な人種にとって、サイコンはまだ必須だ。 しかしスマホはスマホで進化を続ける。要するにサイコンが生きる道は、スマホより軽く小さく安く、高温低温振動風雨に耐える堅牢性とロングライドにも十分なバッテリー寿命を持ち、機能的には自転車用に特化する、という方向性をさらに先鋭化させることだろう。そういう意味で、安価で高機能で使いやすく自転車的エンターテインメント性もあるブライトンは、いい位置に付けていると思う。 問:フカヤ
Bicycle Club編集部