名物車両「出雲大社号」1月13日引退 26年愛された一畑電車車両 最後の花道、イベント企画
かつて「出雲大社号」として親しまれた一畑電車(出雲市平田町)の5010号、5110号車が2025年1月13日に営業運転を終了する。オレンジを基調とする車両が多い中、青と白、黒を合わせた独特のデザインが特徴で鉄道ファンを魅了してきた。運転開始から26年、老朽化による引退で最後の花道を飾ろうと、同社は心を込めたイベントを計画している。 【写真】「出雲大社号」1月13日引退 26年愛された一畑電車名物車両
車両は1967年製で、京王電鉄(東京都)から譲り受け、改造後、98年に運転を始めた。出雲大社を訪れる観光客らが利用する優等列車をつくろうと、進行方向向きのクロスシートを一畑電車で初めて設置した。2両で座席は80人分あり、定員220人。当初は「出雲大社号」と名付けられ、松江しんじ湖温泉駅と出雲大社前駅間を1日2往復し、観光客の利便性を高めた。 一時は電鉄出雲市駅と松江しんじ湖温泉を結ぶ通勤用の特急などにも使用。かつて小田急電鉄(同)のロマンスカーに利用されていたクロスシートのイスは、乗り心地が良く、仕事で疲れた通勤客を癒やし、好評を得た。 車両デザインは宍道湖の青、出雲平野を覆う雲の白、出雲大社の厳粛さの黒をイメージした。途中でデザインを変える車両が多い中、同社では珍しく当初のままを貫き通した。15年以上乗り、熱烈なファンという出雲市平田町の増田義裕さん(68)は「この車両に乗れたらラッキーというのがあった。寂しさはあるが、たくさんの思い出をもらった」と話す。
一畑電車は引退イベントとして、同型で今月引退した富士山麓電気鉄道(山梨県富士河口湖町)の富士急行線1001号編成とセットにした記念入場券を1月11日に発売する。12日は「出雲大社号」を復活させ、松江しんじ湖温泉-出雲大社前駅間を全席指定で運行する。指定券は販売開始1週間で売り切れた。 運転士の宅野康平さん(29)は子どものころ、祖母に会いに行くために乗った思い出の車両で「お世話になった。安全運転でしっかり締めたい」と話し、野津昌巳営業部長は「引退は残念だが、懸命に走ってくれた。華々しく送り出したい」と力を込めた。