ポルシェ・カイエン 詳細データテスト 無駄なアシストのないV8 クラス最高水準のドライバビリティ
内装 ★★★★★★★★★☆
外観で改良前後のモデルをすぐに見分けるのは難しいが、内装の違いは一目瞭然だ。カウリングが無くなった曲面デジタルメーターは、タイカンのそれに共通する。ダッシュボード両脇には縦型の送風口を備え、センタートンネルにはお馴染みのグラブハンドルが。垢抜けていながらもタフさを感じさせる。 質感も高い。大きなパネルやふんだんなステッチはもちろん、実体ダイアルで残った音量調整ノブやエアコンパネルといった小さな部分まで高価そうな仕上がりだ。 そうはいっても、テスト車の内装はほとんどオプションが未装着で、同等グレードのアウディSQ7やメルセデスGLEあたりと比べてスパルタン気味。標準のダッシュボードでも表面はソフトで、シートのサポート性も高いのに、みんなフルレザートリムと18ウェイのスポーツシートを選びたがる気持ちがよくわかる。 ウッドトリムも数多く用意されている。ベントレー並みとは言わないまでも、高級感はかなり高めてくれる。 エルゴノミクス的には、歴代最高だろう。多機能ステアリングホイールは新デザインで、このクラスではもっともスイートなフィーリングかもしれない。ヒップポイントから膝、足首の位置決めは、スポーティさと実用性が絶妙なバランス。後席レッグルームは新型メルセデスEクラスに匹敵する。 ポルシェらしい包まれ感もある。レンジローバー・スポーツあたりだともっとラウンジチックだ。オプションのパノラミックルーフを追加すれば開放感も増す。残念なのは、3列シート仕様がないことくらいだろうか。
走り ★★★★★★★★★☆
比較的下位グレードのカイエンに戻ってきたV8パワーはどんなものか。これがなかなかいい。この仕様では、取り立てて爆発的でも騒々しくもなく、最新V8よりオールドスクールでゆったりしたキャラクターなのがいいのだ。 控えめな個性と有機的なフィールがあり、どんな場合でも楽しい相棒で、ドライバーをしかめっ面にするようなことはない。 テレメトリーのデータも気になるところだろう。ウェットコンディションで0-97km/hが5秒ジャストというのは悪くないが、速いとも言えない。実際、この手のクルマとしては妥当な感じだ。4速固定での48-113km/hは6.3秒。強烈なオーバーテイクは望めないまでも、まずまずのペースで追い越しをこなすだろう。 ジャンルの違うクルマだけに同じように比較はできないが、MTのBMW M2は同じ条件で8秒、911GT3 RSはカイエンSより0.5秒速かっただけだ。マイナーチェンジ前のモデルでは、ターボGTが今回より1.1秒速いタイムを出している。 だから、フレキシビリティがここでは重要なワードだ。このエンジンのレッドゾーンは6800rpmと高めだが、ピークトルクは2000rpmから出る。パドルでの手動変速も可能だが、オーバーテイクでもしない限り必要になることはない。ギアボックスのコントロールモジュールは一般的に、スロットルペダルのポジションを正確に拾う。 カイエンSとE-ハイブリッドに採用された、新型ブレーキブースターも特筆もの。どちらもタイヤ表面温度を検知し、ABSの制御に利用することで、摩擦と回生、ふたつのブレーキの移行をスムースにする。実際、フィールはよく、どこまでもプログレッシブだ。