郊外私鉄沿線に大量の不動産を持つ「大地主」だが…「お金が不安で夜も眠れない」ワケ【元メガ・大手地銀の銀行員が助言】
親から楽して不動産を受け継ぎ、大して働かなくても悠々自適な生活ができるーーそんなイメージを持たれがちな地主。しかし、その実態は大きく異なっており……。本記事では、一念発起して不動産を手放すことにした北沢家(仮名)の事例とともに、不動産売買の注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
地主業は決して楽ではない
地主といえば、多くの不動産を所有しており、かつその不動産からの賃貸収入があり裕福な生活ができていると思われるのではないか。大きな家に住み、高級車を所有して何不自由ない生活を送っているように思われる。 しかし、不動産賃貸経営に当たっては多くのコストがかかり、決して楽なものではない。 北沢家(仮名)は、郊外私鉄沿線の地主であり多くの不動産を所有しているが、手元の現預金は実はさほど持ち合わせていない。当主の北沢隆一は、このままでは次の代の相続税の納税資金が不足してしまうと頭を悩ませていた。北沢家の不動産収入は年によって若干の変動はあるがおおむね年間1億円程度で推移している。 しかし、不動産の維持にかかる支出や、ローンの返済、税金の支払いなどを行うと手元に残る収入はわずかであり、先代相続税の納税資金の支払いや兄弟への代償分割資金の支払いなどで手元にある現預金はほとんど残っていない。日々の資金繰りのことを考えると、夜も眠れず頭を悩ませることが多い。 また、経費を削減するためにも時間があるときなどは自ら所有不動産の草むしりや、日常の清掃も行っているが、高齢の身体に鞭を打って行っているような状況で疲労が蓄積している。近年は夏の暑さも尋常ではなく、昨年は何度も熱中症になりかけたりもした。したがって、決して周囲の人がいうような贅沢な生活を送れているわけではない。 何も知らない周囲の人からは「不動産が沢山あって羨ましい」「お金に恵まれ裕福な生活ができているのではないか」などと言われることが多いが、ぜひ一度代わりにやって欲しいと思うことさえある。